行きたい会社は決まった。さて、どの枠で応募しよう?
就職活動の中で悩むポイントのひとつに、どの職種・枠で応募をするか、という点があげられます。総合職なのか、一般職なのか、専門職なのか、はたまた、もっと細分化された職種での応募にするのか。
この選択を迫られたとき「自分にとってどれが最適か」を考えることを阻む壁がいくつかあると思います。まずは「応募の倍率が低いこと」。行きたい会社であればあるほど、どうにかして入りたい、という気持ちが強くなってしまうこともあるでしょう。その結果、自分がどう働きたいかという点よりも、倍率が低そうなところ、内定をもらえる確率の高そうなところを選びたくなってしまう気持ちもわかります。
転勤の有無だけで考えてしまうこと、初任給の数字だけで比較してしまうことなどもあるようです。行きたい会社・業界が見えてきたからこそ、選択を焦り、視野が狭くなってしまうケースを多く見てきました。
さらに影響として大きいのが「周りの評価」。たとえば、なんとなく一般職よりも総合職の方がよさそう、という声が同級生から聞こえてきたら、自分の意見は棚に上げて、ついつい流されてしまうこともあると思います。
どんな就活をしているか、正直に話すことが恥ずかしい
就活中、周りの友人と「どんな会社を、どんなポジションで応募しようと思っている」と話す機会もあると思います。そのときに、「この選択をしたと言ったら恥ずかしいかも」というなんとも言えない不安感を抱いたことがある方もいるのでは?
この連載で以前も書いた通り、私は今でこそ営業という仕事が大好きですが、就活当時「営業って、なんだか泥臭い印象があるしイヤだなぁ」と思っていました。今振り返ってみれば、これは周りがクリエイティブな仕事で内定を手にしていたり、企画職こそがかっこいいという風潮が周りにあったことから、やったこともないのに「イヤだなぁ」と思っていた気がします。
だからこそ、総合職しか受けていない、つまり入社後の配属もまだわからないどころか内定も出ていない時期にもかかわらず「企画職やマーケティング職に就くのだ」と、本心かどうかもわからないのに繰り返し周りに言っていました。思い返してみると、覚えたての呪文を唱えるように「周りに恥ずかしくないようにこの職種を言うのだ」と自分に言い聞かせていたようにも思えます。
もうひとつ。私の就活はもう10年以上前のことなので、今よりもコンプライアンスが緩かった時代の話ではありますが、面接でショックを受けたことがありました。
ある大手企業の総合職に応募して進んだ一次面接でのこと。面接官から開口一番に「君は女の子だし、総合職じゃなくて一般職の方が向いているんじゃない?」と言われてしまったのです。まだ、自己紹介も自己PRもしていないのに。
私は悩みに悩んで総合職としての働き方を選んだつもりだったけれど、私自身がなにか大きな選択ミスをしたのだろうかと恥ずかしくなり、自信をなくしました。
私自身が就活中に感じた不安や焦りと似たような悩みは、学生さんや、20代で最初の転職を迎える人たちから今もよく耳にします。
よく考えてみれば、どの会社のどのポジションを受けるのかは、自分自身で考え抜いた答えであるなら、他の誰に話しても恥ずかしいことなんかじゃないはず。人それぞれ、仕事に向き不向きもあるし、会社の社風とのマッチングは応募してみなければわかりません。
たとえば、私は人と話すのが大好きだから、取材現場のある編集・ライターの仕事や営業の仕事も大好き。かたや、知らない人と話すのは苦手だから内勤がいい、と今の仕事に誇りを持っている友人もいます。この二人が全く同じ会社・全く同じ職種に同じように憧れたり、かっこいいと思ったりするかと言えば、基準が違うから評価も変わると思うのです。
「この仕事に就きたい」と語ることは、誰がどんな話をしたって恥ずかしがるべきではありません。自分の特性や、憧れていることに正直になって考え抜いた選択なら、それを尊重すればいいのだと思います。
「職業に貴賤無し」という言葉は、就活中こそ頭の片隅においておくべし
私は「職業に貴賤無し」という言葉が好きです。仕事をしていると、どうしても仕事のフローの中で上流・下流という考えが生まれてしまったり、ポジションに優劣をつけてしまったりすることがあります。でも、よくよく考えてみるとどの仕事も尊いし、どれかひとつのポジションが抜けてしまっては全体が崩れてしまう、という会社や部署がほとんどではないかと思います。
仕事を進める上で、たしかにプロジェクトを順序立てて成功に導いていくためには、「上流」と言われる、企画を考えたり、予算編成を考えたりするポジションは出てくるでしょう。でも、それを成し遂げるために細分化されたタスクをひとつずつ実行していく人たちがいなければ、さらに彼らを支えるバックオフィスの方々がいなければ、円滑には進みません。
これまでに様々な企業の採用を見てきましたが、たとえば企画職と営業職がお互いにリスペクトしあっているような会社は、比較的退職者が少ないように見受けられました。もちろん、仕事でいい成績を出すために頑張ったり、表彰されることは素晴らしいこと。だけど、その成績とは別に、そもそもその職種自体を見下したりする必要は全くないと思うのです。
就活中、ついつい周りの評判で「この職種はダサい」と感じてしまうこともあるかもしれません。でも、本当にそうでしょうか? その「ダサい」と言っている人は、その仕事に就いたことがあるのでしょうか? 周りの評価ではなく、自分にとっての絶対評価で考えたら、もしかしたら自分にぴったりな素敵な仕事なのでは?
ジョブ型雇用の増加=選択肢の増加。だからこそ自分の基準を持とう
最近は、総合職・一般職などの職種別採用をやめている企業も増えているようです。長期インターンなどで適性を見ながら採用を考える企業も増えています。ジョブ型雇用で、さらに細分化した職種で募集をかける企業に直面する機会も多いでしょう。
そうなると、きっとますます不確実な基準を元に「あの仕事はやめた方がいいらしい」などの噂が耳に入ることもあると思います。そんな時は、周りの話に流されず「自分にとってどんな働き方が合っているだろうか?」と自然体で考えてみることをおすすめします。
その職種で、どんな人たちと関わりながら、どんな生活リズムで、どれくらいのお給料をもらって働くのか。自分にとって必要な基準を心の中にしっかり持つことができたら、どんな仕事もあなたにとってぴったりな選択だと自信を持てるはずです。
(文: 山本梨央、デザイン:高木菜々子、編集:筒井智子)