【理系院生】脱推薦、理系特化サイトで次々オファー 24卒座談会

【理系院生】脱推薦、理系特化サイトで次々オファー 24卒座談会

    理系就活に大きな変化が訪れ、「研究室推薦」による就活を選ぶ学生が減っています。「理系就活2.0」の前編では、こうした理系就活のトレンドを紐解きました。

    では実際、メーカーや農業系、食品系の企業を志望し、希望どおり内定を獲得した24卒の先輩は、どのような就活をしたのでしょうか。

    今回は3名の理系学生のみなさんに集まっていただき、就活の変化について聞きました。

    目次

    令和の理系就活・大変化

    推薦に頼る理由が見つからない

    ──みなさんが研究室や教授からの推薦ではなく、自由応募を選択したのはなぜですか?

    柏崎 学部4年生になった頃、研究室の同期たちが就活を意識し始め、学内でも就活イベントが開催されるようになりました。自分も何かやらなきゃと焦って、就活を始めた頃にとりあえず理系向け就職サービスに登録したのが、自由応募による就活の始まりでした。

    木下 私は正直「推薦」で就活しても、そこまで有利になるのかな、と感じてしまって。周りの話を聞いていると、推薦と言っても「後付け推薦」が多いようでした。「自由応募」で選考を受けていて途中で推薦に切り替えたら、最終面接の前くらいに推薦状を出してください、などと言われたりするらしいです。

    当時はメーカー、不動産、インフラといろんな業界を見ていたので、推薦を積極的に使おうという気になりませんでした。

    佐久間 理系とはいえ先輩や周りの友だちに話を聞いても、そもそも推薦を利用するという話はあまり聞かなかったですね。

    ──推薦の存在感が薄いですね。

    佐久間 うーん、木下さんと同じで、推薦のメリットをあまり感じられなかったんですよ。大学のWebサイトに推薦先企業の一覧があったのですが、個人的にはマッチすると思える企業が見つかりませんでした。教務課などいろんなところを回って書類を準備しなきゃいけないので、手続きも煩雑ですし。わざわざ推薦で就活しなきゃいけない理由が見つかりませんでした。

    柏崎 そうですね、僕の周りでもポジティブな面よりも、ネガティブな面の方が大きいから、推薦はいいや、という人が多かったですね。

    推薦就活の不透明なプロセス

    ──そもそも大学推薦やOB・OG紹介は選択肢になかったということでしょうか?

    木下 推薦を使うと辞退できないイメージがあって、この段階で1社に決めるのは無理だと思い、選択肢にありませんでした。やっぱり、学生側へのメリットが少ない気がしちゃいますよね。

    柏崎 僕も、推薦は内定辞退ができない、というネガティブなイメージがあったので、積極的に利用しようとは思いませんでした。また、私の大学では4月以降に推薦状が使えるようになるのですが、私は結果的にそれより早く就活が終わったので、そもそも推薦枠を利用するチャンスもありませんでした。

    佐久間 うちの大学の場合、推薦枠の多くが地元企業だったんですよね。でも僕は他の地域での就職も視野に入れていたので、マッチしませんでした。

    そもそも推薦って、とくに大学から「推薦応募の仕方」などをアナウンスされるわけではないんですよ。どうしたら推薦をもらえるのか、やり方を調べるところからだったので、それなら自分で就活をしたほうが効率的だと思いました。

    令和の理系就活・大変化
    kazuma seki / iStock

    インスタ・先輩・友だちがきっかけで就活をスタート

    ──理系学生・院生のみなさんも、就活サービスを使った就活は一般的ですか?

    佐久間 一般的だと思います。私の場合、学部4年生の7月ごろ、Instagramの広告で理系就活サイトを知って登録しました。ほかにもリクナビとかマイナビみたいな、一般的な就活サービスにも登録しましたよ。

    学部4年生の7月だと、さすがに私の周りで就活を始めている人は少なかったですが、本格的に解禁になる翌年の春ごろは研究が忙しくなる時期で、早めに動いた方がよいと思っていました。

    木下 そうですね。学部4年生のときに研究室の先輩から「とりあえず5月くらいから就活サービスに登録しとかないと、6月のインターン情報解禁に間に合わないよ」と言われたのがきっかけです。

    研究熱心な研究室だったので、長期間休んでインターンシップに参加するといったことができなかったんです。他の学生と比べてインターンに参加できる機会や日数が少なくなる分、早めに動き出さなきゃ、と周りの友だちとも話していて。それで先輩に教えてもらったり、友だち同士で招待し合ったりして、就活サービスに慌てて登録していきました。

    柏崎 一般的かどうかはわからないのですが、僕の場合は、理系就活サービスに登録するとAmazonギフト券がもらえるタイミングだったので登録しました(笑)。もちろんリクナビ、マイナビにも登録しましたね。

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    RyanKing999 / iStock

    自分に興味のある企業とマッチングしたい

    ──理系に特化した就活サービスを活用したメリットは何でしたか?

    佐久間 理系に特化していない一般的な就活ナビサイトでは、自分から企業にアプローチしなければ選考はもちろん、話を聞くことすらできません。そうすると、研究を続けながら就活を進めるのがだんだんきつくなってくるんです。

    でも僕は理系就活サービスを利用したので、企業がまず自分の研究内容を見てくれますし、企業側からオファーをもらった上で面談や説明会に進めました。これなら研究に取り組みながら、就活も進められると思いました。

    実際の面談の際も、プロフィールを読んでくれた企業側から話をしてくれるので、ゼロから説明する必要がなくて楽でしたね。興味を持ってくれた企業が自分のどこに魅力を感じたのかを聞くことは「企業から見た自分の価値」の発見につながり、後の就活にも役立ちました。

    木下 理系就活サービスは、研究に打ち込んできた学生・院生の視野を広げる手助けをしてくれるなと感じました。

    登録後、思っていた以上にたくさんの企業からオファーをもらえました。有名な企業からのオファーも、知らない企業からのオファーもあり、多種多様でした。この企業はどんな事業なのだろうと調べていくうちに、自分が何に興味があるのかを認識するきっかけになりましたね。

    オファーをいただいた会社のうち数社とオンラインでカジュアル面談をしましたが、面談した企業の社員に私の興味関心を深掘りしてもらい「あなたのような志向なら、こういう道もあるかもしれないですね」と、思っていたのとは全然違うキャリアを紹介してもらって、選択肢が増えました。

    柏崎 就活ナビサイトをいろいろ使ってみて思ったのは、エントリーシート(ES)を書く練習になるということでした。

    なかでも理系就活サービスは、詳しい研究内容についても記入できます。記入を進めることでこれまでの経験を言語化する練習になりましたし、記入項目の多くはそのままESでも必要な情報だったので、自然と自己分析が進んで、いろんな会社のES作成や面接の事前準備ができました。

    それから、少人数のイベントはありがたかったですね。オンライン上で顔を出しながら企業に直接質問ができたので、自分の知りたいことやその企業に関する理解が深まりました。

    令和の理系就活・大変化

    『令和の虎』を面接の参考にした

    ──就活ナビサイト以外に、使っていたSNSやサイトなどはありますか?

    木下 理系の場合はこういう領域特化型のサービスがあるので、それを使う人がほとんどです。それ以外に自分からアプローチしたい企業には、リクナビ、マイナビなど一般的なナビサイトを使っていました。TwitterもYouTubeも、とくに就活のためには見ていなかったですね。

    佐久間 僕は、就活系YouTuberやTikTokerは本当に信頼できる情報が掲載されているかわからないなと感じていて、全く見ていませんでした。

    柏崎 そうですか……? 僕は結構『令和の虎』というYouTubeチャンネルを見ていました。ベンチャー企業を経営している起業家が登場して出資を依頼する番組なんですけど、面接の予習になるなと思って。

    周りの友だちでも、TikTokやYouTubeを見て「逆質問は何を聞いたらいいか」とか「ウケのいいガクチカは?」といった動画から情報収集している人もいましたね。

    学生と企業、理想のマッチングができる社会へ

    ──最後に、理系就活について「もっとこうなってほしい!」と思うことがあれば教えてください。

    柏崎 企業も学生も、互いの情報をより深く知れるようになれば、よりよいマッチングができるのではないかと思います。とくに学生側からすると配属先の情報は見えない部分が大きいので、入社したあとどのような働き方になるのか具体的にイメージができるようになるといいなと思いました。

    佐久間 私は研究をしっかりやりたいと思っていたので、そういう学生でも自分に合う企業が見つけやすくなればよいなと思っています。研究に没頭していたことが就活市場で有利になれば、学生はもっと研究に専念できると思います。

    木下 私も研究に軸足を置きながらでも、就活を進められるとよいなと思います。

    学生も企業も変に背伸びせず、ありのままを見せ合うような本質的なコミュニケーションをした方がよいですよね。

    (文・撮影:種石光、デザイン:高木菜々子、編集:石川香苗子、筒井智子)