リスキリングの選択、間違ってない? 既卒の転職者に企業の期待
2023年7月18日(火)
就職情報サイトなどを運営する「学情」は、20代の通年採用が増えていることを背景に、中途採用をする企業・団体297社の人事担当者からアンケート調査しました。
調査結果によると、未経験者を採用する際、企業が評価している能力やスキル・経験は「コミュニケーション能力」が89.6%でトップでした。
次いで「成長意欲」70.7%、「ビジネスマナー」39.1%、「論理的思考力」30.3%と続きます。

一方、「業務に関連する知識・経験」「業務に関する資格・スキル」は、9〜11%と相対的に低い結果となりました。
企業が未経験の転職者には知識やスキルよりも、「話す、聞く、伝える、書く」といった基本的なコミュニケーション能力を重視している実態が浮かび上がりました。
同時期の調査では、業種・職種の未経験者を採用する際に「重視するポイント」は、「人柄・社風との相性」が90.2%で最も多く、ミスマッチを防ぎたい企業の思いが反映されています。

次いで「成長意欲」が49.5%と高い一方で、ここでも「所有資格・スキルの高さ」は13.8%と最も低い結果になっています。
未経験者の中途採用の際では、「評価」も「採用での重視」も、ともにスキル重視ではないことが改めて裏付けられています。

一方、若い転職者の心のうちはどうでしょうか?
新卒者の3人に1人が3年以内に離職(厚生労働省の調査)するなか、学情が「3年以内に転職を経験している20代」を対象にした調査では、転職を重ねた際に「転職後にギャップがあった」とした回答が約7割に上りました。

「昇給しにくい」が33.0%、「仕事内容が想定と違った(期待していた業務ができない)」(29.6%)、「人間関係がイメージと違った」(27.7%)という結果です。
およそ半数は「転職しなければ良かった」と感じており、応募側からみても企業との「ミスマッチ」は大きな悩みの種です。

企業が「社風や相性」を重視している調査結果とも重なっていますが、ギャップを埋めて定着して活躍してもらうには、「転職後の社内のやりとりがスムーズか。つまりコミュニケーションの力がとても大事で、面接段階から評価ポイントとして重視している」(大手人材会社幹部)というわけです。
円滑なオンボーディングや「転職後すぐの転職の予防」のためにも、コミュニケーションの適切さや成長意欲を求める企業が多いのは、日本に限った話ではありません。
アメリカでMBA(経営学修士)の転職希望者に雇用主が求めるスキルのトップ5では、「書く力」や「プレゼンテーション能力」を含め、コミュニケーション関連のスキルが4つもランクインしています。

既卒・第二新卒でも「即戦力を」とリスキリングに励む動きが広がっています。資格取得やスキルアップに励むことが否定されるものでは決してありませんが、抜け漏れがちな観点を示してくれる調査結果と言えそうです。
(文・比嘉太一、編集・野上英文)