SaaSの普及による営業の分業化の加速で、新しい営業職種「インサイドセールス」に注目が集まっている。
これまでIT系企業での導入が主流だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、その他の業種にも広がりつつある。
またセールスフォースなど、インサイドセールスを、営業職が最初にやる仕事に設定する会社も増えている。
昨年11月に『インサイドセールス ー売り上げを伸ばす営業組織の強化ガイドー』を上梓したビズリーチの茂野明彦さんは、インサイドセールスは「若手が挑戦すると、得られるスキルが多い職種」だとその利点を語る。
そんな日本におけるインサイドセールスの第一人者の茂野さんに、仕事の役割や需要拡大の背景、身に付くスキルなどについて徹底解説してもらった。
—— 営業の新しいスタイルとしてインサイドセールスに注目が集まっていると耳にします。そもそも、インサイドセールスとは、どのような仕事なのですか?
インサイドセールスとは、従来型の訪問営業(フィールドセールス)とは異なり、訪問をせずに見込み客へのテレアポやメール、Web会議システム等を用いて遠隔で取り組む営業スタイルを指します。
インサイドセールスの特徴的な役割として「SDR(Sales Development Representative)」「BDR(Business Development Representative)」「オンラインセールス」の3つの役割があります。
SDRとBDR、この2つはインバウンド型(顧客から企業へのアプローチ)かアウトバウンド型(企業から顧客へのアプローチ)かが大きな違いです。
SDRは、インバウンド型で商談機会を創出する役割です。
具体的には、自社製品を利用する顧客から問い合わせ窓口にきたメールに対応する。あるいは、自社サービスの販売促進となるセミナーや展示会などのイベントをマーケティングとともに企画し、その参加者のメールアドレスなどの顧客データを入手したのち、その電話やメールにアプローチし、アポイントにつなげます。
SDRでは、一般職と決裁者の距離が近い中小企業やスタートアップをターゲットとする場合が一般的です。
一方BDRはアウトバウンド型で、ターゲットとなる企業を選び、戦略的にコミュニケーションを取ることで商談機会獲得を狙っていきます。そのため、いかに受注の確度が高い見込み顧客の商談機会を得ることができるかが重要です。
大手企業が主要なターゲットとなり、主に役職者や役員に直接アプローチすることが求められます。
インサイドセールスの3つ目の役割であるオンラインセールスとは、客先を訪問せずオンラインのみで商談を進め、最終的な締結までを行う営業形態を指します。
少しずつ広がりを見せていたオンラインセールスですが、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、対面を前提としたフィールドセールスが一般的だった大手企業でも急速に導入が進んでいます。
—— なぜ今、これほどまでにインサイドセールスが注目されているのでしょうか?
時代の変化によってインサイドセールスのニーズが高まっているからです。
近年サブスクリプション(月額課金)型のビジネスモデルが増加していますが、サブスクリプションではライセンス(使用権利)の追加や継続的な機能追加などによって、追加料金が発生するため、契約の更新や新しい機能が開発されるごとに営業が顧客に提案する必要があります。
つまり、従来の「売り切り型」のビジネスモデルと比較して営業担当者の負担が増加しており、訪問型営業では効率が悪くて、対応しきれないのです。
また、インサイドセールスは最低限スマートフォンとパソコンがあれば仕事ができるため、働き方は自由です。ですので子育てや介護など様々な理由でオフィス勤務が難しい方にも向いています。
そして、これまで仕事の両立が難しかった人でも勤務可能というポイントでは、人手不足が課題となっている現代日本社会にとっても大きいメリットです。