【解説】インサイドセールスとは?仕事内容や身に付くスキルを徹底解説
2021年3月26日(金)
インサイドセールスとは、従来型の訪問営業(フィールドセールス)とは異なり、訪問をせずに見込み客へのテレアポやメール、Web会議システム等を用いて遠隔で取り組む営業スタイルを指します。
インサイドセールスの特徴的な役割として「SDR(Sales Development Representative)」「BDR(Business Development Representative)」「オンラインセールス」の3つの役割があります。
SDRとBDR、この2つはインバウンド型(顧客から企業へのアプローチ)かアウトバウンド型(企業から顧客へのアプローチ)かが大きな違いです。
SDRは、インバウンド型で商談機会を創出する役割です。
具体的には、自社製品を利用する顧客から問い合わせ窓口にきたメールに対応する。あるいは、自社サービスの販売促進となるセミナーや展示会などのイベントをマーケティングとともに企画し、その参加者のメールアドレスなどの顧客データを入手したのち、その電話やメールにアプローチし、アポイントにつなげます。
SDRでは、一般職と決裁者の距離が近い中小企業やスタートアップをターゲットとする場合が一般的です。
一方BDRはアウトバウンド型で、ターゲットとなる企業を選び、戦略的にコミュニケーションを取ることで商談機会獲得を狙っていきます。そのため、いかに受注の確度が高い見込み顧客の商談機会を得ることができるかが重要です。
大手企業が主要なターゲットとなり、主に役職者や役員に直接アプローチすることが求められます。
インサイドセールスの3つ目の役割であるオンラインセールスとは、客先を訪問せずオンラインのみで商談を進め、最終的な締結までを行う営業形態を指します。
少しずつ広がりを見せていたオンラインセールスですが、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、対面を前提としたフィールドセールスが一般的だった大手企業でも急速に導入が進んでいます。
時代の変化によってインサイドセールスのニーズが高まっているからです。
近年サブスクリプション(月額課金)型のビジネスモデルが増加していますが、サブスクリプションではライセンス(使用権利)の追加や継続的な機能追加などによって、追加料金が発生するため、契約の更新や新しい機能が開発されるごとに営業が顧客に提案する必要があります。
つまり、従来の「売り切り型」のビジネスモデルと比較して営業担当者の負担が増加しており、訪問型営業では効率が悪くて、対応しきれないのです。
また、インサイドセールスは最低限スマートフォンとパソコンがあれば仕事ができるため、働き方は自由です。ですので子育てや介護など様々な理由でオフィス勤務が難しい方にも向いています。
そして、これまで仕事の両立が難しかった人でも勤務可能というポイントでは、人手不足が課題となっている現代日本社会にとっても大きいメリットです。
何といっても成長スピードが速いことが挙げられるでしょう。
同じ営業でも外勤があるフィールドセールスの場合、案件によって移動時間を要するため、顧客へのアクションは多くても1日あたり数件にとどまります。
一方、インサイドセールスの場合は移動時間がゼロのため、1日約20~50件のアクションを行え、その数だけ顧客からのフィードバックがあります。
つまり、同じ時間でもフィールドセールスに比べてインサイドセールスのほうが多くの経験を積める状況になるため、経験から学ぶことが多く、短期間で成長することができます。
例えば、ツール活用能力です。顧客の連絡先を上から順に淡々と電話するだけでは効率の良いアプローチはできません。営業効率を上げるためにSFA(営業支援システム)の活用が重要になってきます。
SFAは顧客情報を管理したり通話内容をスコア化したりするツールですが、これらのノウハウを活用することは、インサイドセールスとして成功するために必要不可欠です。
そしてこのツール活用能力は、同様にデジタルツールの活用が求められるフィールドセールスやカスタマーサクセスでも必須なので、キャリアの可能性を広げる意味でも重要になります。
また、セルフマネジメント力も身につくでしょう。いつ電話をかけ、作業をこなすかを把握し、仕事のプロセスを決めなければ、1日に数十件のアクションをこなすことはできません。
計画通りにアクションが出来なければ、どのタイミングでリカバリーすべきか。こういった綿密な業務構築が必要なので、自律的な行動をする力を身につけることができます。
また、インサイドセールスは業種・業態・役職・役割・企業規模問わず、様々な顧客と対話をする機会が多い仕事です。
担当者と話すことで、業種や業界の内容のみならず、各業種・業界・役職の抱える課題や、それぞれの営業事例における効果的な営業手段まで見えてくるので、必然的に幅広い業界知識の習得も期待できます。
このように、インサイドセールスの仕事を究めようとすれば、ビジネスパーソンとして必須である様々なスキルや知識の効率的な習得が見込めるのです。
目の前の仕事に注力するあまり、ただの“作業”と化してモチベーションが低下してしまうケースがあることです。
クロージング(顧客と契約を締結すること)の段階をフィールドセールスが担当する場合に特に当てはまりますが、インサイドセールスは顧客から直接感謝される機会が多くありません。
また前述した通り、いかにアクションを効率化するかが重要になってくるので、効率を求めれば求めるほど、仕事を“作業”として捉えてしまうケースがデメリットとしてあげられます。
すると、仕事そのものが目的化してしまい、意義を見失ってしまうのです。
ですので、インサイドセールスの組織を立ち上げるうえでは、一人一人のキャリアプランのサポートや表彰制度の設計などが重要になってきます。
インサイドセールス部門のビジョンやアイデンティティ、KPIをメンバーの一員としてともに考えて言語化し、情報共有をすることです。
そうすることで、自分の仕事はインサイドセールス部、ひいては社内にとってどのような意味があるのかを考えながら業務を推進することにつながります。
まず、顧客のニーズに寄り添うホスピタリティはとても重要です。
さらに、インサイドセールスとしての活躍のレベルを分けるのは、「緻密さ」「論理的思考力・分析力」「アンテナ力」です。
まず緻密さですが、例えば、仮にそのアクションで商談に繋げることができなくても、インサイドセールスの場合それで終わりにはできません。
今が商談のタイミングでないならば、適切な時期にアクションを試す、次のイベントを案内するなど、様々なパターンを設計し、全てを実行しなければいけません。
また繰り返しになりますが、インサイドセールスでは、1日のなかで顧客へのアクションのみならず、リストの整理や説明資料の提供などの事務作業も同時に進めていく必要があります。
むやみに目の前の作業をこなすだけでは有効なアクションを起こせる回数も下がり、セールスとしての成果が出ません。
なので、商談のチャンスを確実にとらえ、かつ効率のよい業務設計が可能となる緻密さが成果を最大化するポイントです。
論理的思考力・分析力は、インサイドセールスで今や必須であるSFAの活用と大きく関連します。
蓄積されたデータをしっかりと分析し、どのようなジャンルの顧客にアプローチするのが最適なのかを導き出す力がなければ、ただ手当たり次第に当たるだけで成約にはつながりません。
そして、アンテナ力。例えば、法改正や規制緩和が行われる記事があったとします。すると関連する業界が活発になります。
インサイドセールスで結果を出す人は、それらの情報収集を入念に行い、関連業界専用のリストを作成します。このように、アンテナを張れば先を見越した行動が起こせるので、結果的にアプローチできる確率も上がっていくのです。
これまで語ってきたように、様々な力が求められるインサイドセールスは難しい仕事だと言えます。
しかし、営業経験の蓄積量が活躍の度合いを左右するフィールドセールスとは異なり、インサイドセールスは未経験者にも広くチャンスがあるおすすめの仕事でもあります。
実際に私は元ホテル勤務やウエディングプランナー、教師など、業種も業界も様々なバックグラウンドを持つ人材をインサイドセールスとして採用してきましたが、どなたもめざましい活躍をしています。
そして何より、インサイドセールスの経験で培える能力や知識は、ビジネスにおいて非常に汎用性が高く、その後のキャリアの可能性をぐっと広げてくれます。
ビジネスパーソンとして早い成長を志すなら、大いに挑戦する価値のある職種なのではないでしょうか。
取材:佐藤留美・小原由子、構成:小原由子、編集:佐藤留美、撮影:茂野明彦(本人提供)