就活中の“キャリア迷子” 半歩外の「ロールモデル探し」が突破口に

就活中の“キャリア迷子” 半歩外の「ロールモデル探し」が突破口に


    この記事に登場するロールモデル

    就職活動をする中で「ロールモデル」を考えたことはありますか? パッと浮かばないから、ロールモデルというのはいないことにしておこう。どうやって考えたら良いのかわからない。そもそもロールモデルって必要なの? そう考える人も多いでしょう。

    自分のキャリアプランを考える上で、実はヒントの宝庫になっているのがロールモデル探し。業界研究・企業研究と並んで、自分自身がどういう働き方・生き方をしたいのか考えるのも重要です。

    この連載では、学生向けのキャリア支援講師をする山本梨央さんが、就活生に宛ててアドバイスをつづります。第7回は「ロールモデルの探し方」。自分のキャリアプランに迷った方に、どこから手をつけたら良いかの方法もご紹介しています。ぜひ肩の力を抜きながら、お読みください。

    就活生への手紙#7

    目次

    ロールモデルが見つからない

    就職支援の仕事を始めた当初、大学生と話していてひとつ驚いたことがありました。それは「有名な人でなくてもいいんだけれど、憧れる働き方をしている人は誰?」「ロールモデルはどんな人?」という質問に対して、具体的な人物名を挙げられる人がほとんどいなかったこと。

    私が就職活動をしていた頃、どんな働き方に憧れるか、自分も周囲の人たちも具体的な人の名前をぽんぽんと挙げていました。だからこそ、自分が就職支援の講師という立場になって学生に聞いたとき、憧れの人の名前が出てこないことに驚いたのです。

    今、振り返って考えてみると、この十数年で世の中の働き方が大きく変化し、多様化したというのも、具体的なロールモデルの名前を挙げにくい原因になっているのかもしれません。ただ、こういう点ではこの人、こういう点ではあの人、というふうに分散させて考えるのであれば、思いつくケースもある気がします。

    就活生への手紙#7
    Photo:iStock / Andrii Yalanskyi

    なぜ就活中にロールモデルを探すのか?

    そもそもロールモデルがいなければならない、とは思っていません。ただ、自分の進路に迷っている場合、憧れの人やロールモデルがいれば、彼ら・彼女らのキャリアパスをひもとくことで、自分が目指したい道筋が明らかになることもあります。どんな学校を出たのか。新卒ではどんな仕事に就いたのか。どんな経験を積んで、今のポジションに就いたのか。

    もちろん、全くその通りに人生を歩むわけではありません。でも、その経歴にはヒントが必ず隠れていると思うのです。キャリアアップの仕方だけでなく、生活や家庭との両立などの面でも、きっと参考になるはず。

    就活生への手紙#7
    Photo:iStock / andresr

    新卒でどんな会社に入るべきか、という視点だけではありません。もしかしたら、憧れの人はいろいろな会社・職種を経て今のポジションにいるかもしれない。そんな場合の転職の仕方や、仕事選びの軸などをマネすることから、自分のキャリアプランを考え始めるのも良いと思います。

    ロールモデルを探すなら、まずは身近な人から

    では、どうやってロールモデルを探したら良いのでしょうか? まずは「この人!」と決める前に、働き方の参考にしたい人の選択肢を増やすことから始めることをおすすめします。

    たとえば、一番身近なのは自分の両親や親戚など。会う機会が多い人や、気軽に相談できる人がいたら「就活のときってどうしてたの?」「転職のきっかけは?」など聞きやすいところからヒアリングしてみましょう。もしここで憧れの生き方を見つけられたらラッキーだと思います。逆に、なかなか参考にならなかった、ということがあっても仕方ありません。

    実際、私自身、実家がお寺なので父は住職であり、保育園の園長。母も家業を手伝っているので、二人ともいわゆる「大企業への就職活動」を経験したことはありませんでした。職場が実家の敷地内だから、通勤という概念もありません。就職活動や会社勤めすることのドンピシャな参考になるかと言われたら、ちょっと違う。長女だったから、兄弟で参考になる人がいたわけでもない。そうなると、もう少し広い範囲でロールモデルを探していく必要がありました。

    就活生への手紙#7
    Photo:iStock / davidf

    会社の採用サイトは「社員紹介」を熟読しよう

    次に探しやすいのはインターネット。もし、ぼんやりとでも目指したい業界や会社が見えているのなら、会社の採用サイトなどを見てみましょう。充実した採用サイトを公開している会社だったら、募集要項やイベントの告知だけでなく、社員インタビューが載っていることもよくあります。最近では、社員インタビューの記事だけでなく、働く様子に密着した動画が載っていることも。

    私は、前職で何社か採用サイトの制作に携わりました。企業側も、なるべくミスマッチを防ぎたいから、いろいろな社員の働き方のリアルを伝えようとしています。親近感を持ってもらいたくて若手社員の紹介をすることもあれば、長い目で見たときのその会社での働き方を伝えるべく、中堅社員の紹介をすることも。

    大学生からすると、ついつい年齢の近い人のインタビューばかり読みたくなってしまうかもしれませんが、ロールモデルを探すつもりで、ぜひいろんな年齢層の社員紹介をのぞいてみてください。

    特に特徴的な働き方をしている方や、お仕事で華々しい実績を出している方の場合、採用サイトだけでなく色々なメディアでインタビューを受けていることもあります。媒体やインタビュアーが変われば、同じ人でも語る内容は大きく変わってくるもの。もし少しでも「この人のこと、気になるな」と思ったら、もう少し調べてみても良いかもしれません。

    JobPicksの「ロールモデルの経験談」も、まさにそんな情報の宝庫。これは投稿者が自らの経験談を自身の言葉で書いているものなので、生の声として参考になる部分も多いでしょう。

    就活生への手紙#7
    Phot:iiStock / mapo

    OB・OG訪問で、憧れの人に出会えることも

    家族に話を聞いたり、ネットで調べたりすることに比べると、アポイントを取って話を聞きにいくという時点で少しハードルが高いかもしれませんが、OB・OG訪問で気になる会社の先輩たちに話を聞きにいくのもおすすめです。

    私も大学生の頃、何人かOB・OG訪問をしました。面識のない方に連絡をして時間をいただくのだから、それはもう緊張したものです。ある方はランチがてらお話ししましょうと言ってくださり、オフィス街の素敵なレストランに連れて行ってくれました。激務と言われるお仕事でしたが、そんな中でもおいしいお店に詳しかったり、素敵な休日の過ごし方をしていたり。きっと息抜きや人生の楽しみ方にも貪欲な素敵な方なのだろうなと感じたことを、今でも覚えています。

    さらに、そういうすてきな働き方をしている方々が、どんな人に憧れているのかを聞いたこともありました。そうやって芋づる式に「働き方・生き方」の選択肢を増やしていけば、きっとロールモデルが見つかるはず。

    就活生への手紙#7
    Photo:iStock / South_agency

    ロールモデル探しの「プロセス」が大切

    就職活動をしていると、業界研究や企業研究など大きなくくりで考えることが多いと思います。でも、そこで選択した働き方を実践していくのは、あなた個人。だからこそ、ロールモデルを探すというプロセスの中で「一人一人がどう働き、どう生きているのか」を垣間見ていくことが、参考になると思うのです。

    ロールモデルは一人に絞り込まなくてもかまいません。この「ロールモデルを探す」というプロセスこそが、行き詰まった就職活動の突破口につながることもあるはずです。

    もちろん、誰かを参考にしなくても「自分はこうキャリアを積んでいくのだ」と決まっている人は、その道を進めば良いと思います。なかなかそうできない人こそ、ロールモデルを探すプロセスの中で見えてきたいろいろな人のキャリアパスを眺めてみて、自分ならどうしたいかな?とマネして考えてみることから始めてみてはいかがでしょう。

    就活生への手紙#7
    Photo:iStock / Olivier Le Moal

    (文: 山本梨央、デザイン:高木菜々子、編集:筒井智子)