就職活動中のJobPicksインターン生が、リアルな体験や思いを綴る「就活生日記」。
今回は「就活は情報戦」と少しでも有益な情報を集めようと、SNSで“就活垢”を始めたという話です。大学受験をともに乗り切った思い出のアカウントを就活専用に切り替えたのですが、次々に入ってくる噂話やノウハウにアンテナを張りすぎて......。
就職活動中のJobPicksインターン生が、リアルな体験や思いを綴る「就活生日記」。
今回は「就活は情報戦」と少しでも有益な情報を集めようと、SNSで“就活垢”を始めたという話です。大学受験をともに乗り切った思い出のアカウントを就活専用に切り替えたのですが、次々に入ってくる噂話やノウハウにアンテナを張りすぎて......。
企業の合同説明会(合説)に参加する人やサマーインターン向けのエントリーシート(ES)を書く人など、就活で動き出す友人が増えた大学3年生の6月。就活アプリの通知や大学キャリアセンターからのメールで毎日、沢山の情報が届きます。全部を追いきれず、友人との会話から情報を拾うこともあります。
志望業界が違っても、知らない情報を聞く度に私は焦っていました。
「やばい、自分だけ遅れてる」
「就活は情報戦」と耳にしたことがあり、「もっと効率的に情報を集めなければ」とも思いました。
「リアルな声が聞けそう」「最新の情報がすぐに手に入りそう」と思って、3年生の4月に就活の情報収集のためだけに使う「就活垢」をTwitterで作って、情報を集めることにしました。
高校時代から勉強の記録をつけていたアカウントがあったため、それを就活垢に変えて使い始めたのです。
就活情報のアカウントをフォローすることから始めました。
「#24卒」「#25卒」といったハッシュタグで検索して、片っ端からフォローします。そして、他の就活垢をまねして、私も部活やインターン経験、志望業界の話題をツイートしました。
これで準備は完了。ほどなく多くの「就活垢」にフォローやフォローバックされて、いろいろな情報に触れられるようになり、安心しました。
スマホを手にしてツイッターを開く度に、新しいイベントの告知や就活生のリアルな声などで、タイムライン(TL)はいっぱいです。
流れてきたのは、インターンの募集案内や早期選考といった、就活そのものに関する情報だけではありません。
「面接官を唸らせる逆質問」
「絶対やってはいけないESの書き方」
「実は早期選考がある企業30」
思わずクリックしたくなる投稿もたくさん目につくようになりました。
私の就活は次第にSNSが中心に。
正しいかどうかも分からない投稿を参考にしながら、ESを書いてみたり、「逆質問されたら、これ言おうかな」と考えてみたり...。
後から振り返ると、1日に3時間以上、タイムラインを追っている日もありました。
私が当初に求めていた就活の情報以外に、次のような情報にも触れます。
「内定◯社もらえた」
「実は〇〇では、一部の人にだけ早期選考がある」
「〇〇(インターンの倍率が非常に高い企業)のインターン通った」
見知らぬ誰かと比較しても仕方ないですが、私と同じ「#25卒」の投稿を見ると、「同い年なのに、なんでこんなに差があるんだろう」と、劣等感を少し感じるようになりました。
SNSをしていなければ知ることのなかった他人の情報です。ただ、そうだと頭で分かっていても、目に飛び込んでくる情報で焦りが募って、自己肯定感は下がるばかりでした。
就活情報にアンテナを常に張る日々に、うんざりしていました。
長い就活は始まったばかり。序盤にこれほどやる気を失ってしまって、「これから本格化すると、どうなるのだろう」と、不安な気持ちになりました。
そのころ、私は「みんな1日1社、応募できてる」「みんなセミナーいろいろと参加してる」と、ツイッター情報を基にして友人らによく嘆いていました。
あるとき、あれこれ言う私に友人が、しびれをきらしたようにこう言い返してきました。
「みんなって誰なん、自分が見てる一部だけやん」
言われてみれば確かに。私はタイムラインで見た一部の情報を「就活生みんな」と思い込むほど、SNS中心の生活にのめり込んでいました。友人は情報に振り回されている私を、見かねた様子でもありました。
「ツイッターの就活情報に振り回されすぎ」という友人の声にも後押しされ、私はこのアカウントを消すことを考えはじめます。
「就活垢」は元々、「勉強垢」として、私が高校1年生の時から毎日の勉強記録や大学受験への悩み、揺れる思いを投稿していました。
努力しても結果がついてこず、「浪人しようかな」とも嘆いていたツイート。
当時の私にとってはレベルが高く、受験するか悩んでいた大学を受けると決めたときに「受けるからには、絶対合格する」と決意したツイート。
そして、その大学に合格し、「志望校が母校になった!!!! 受かった!!!!!」という喜びを爆発させたツイート。
いい思い出で、たまに見返しては「わたし頑張ったよな」と懐かしんでいました。
大学に入学してからも、このアカウントで勉強の記録を残し続けていたので、とても思い入れがありました。簡単には削除できません。
思い入れだけでなく、「情報に置いていかれそう」という葛藤もありました。洪水のような情報に惑わされる一方で、シャットアウトすることも不安だったのです。
ただ、友人の言葉を聞いて私が振り返ったところ、投稿から「ポジティブ2割、ネガティブ8割」になっていると自覚しました。
そして私は、思い出いっぱいのアカウントを削除しました。
大学受験の時は、勉強垢から周りの勉強記録を見て、私もやる気を出すことが出来ていました。しかし、今回の就活垢では、マイナスに働いてしまいました。
その差は、なんでしょうか。
私自身は「自分に自信があるかどうか」だと思っています。
中高生の頃は勉強漬けの日々で、勉強をしてきた努力には自信がありました。これに対して、大学生活は勉強だけでなく部活、インターン、さらには就活…。3年生になっても就活にすべての時間を割くことはできません。私は自信がありませんでした。
このため、ツイッター情報から他人と比較すると「自分は頑張っているから大丈夫」と思えず、情報をポジティブに捉えられなかったのだと思います。
周りが私の不安を和らげようと、「そんなに早くから就活してるのは一部だから大丈夫」と言ってくれることもありました。しかし、1度目に入った「頑張っている人たちの情報」が頭から離れず、焦る材料につながっていました。
私はSNS中心の生活となり、周囲のリアルな声よりも、SNS情報に寄って、流れてしまうこともあったのです。
元勉強垢で就活垢だったアカウントを消した現在は、就活アプリの閲覧のほか、合説やウェブセミナーへの参加を通じて、自分が得たい情報をマイペースで集めるようにしています。
今でも「情報戦に負けていないか」と感じる時があります。
しかし、焦りばかり募り、うんざりもしていた就活垢を消したことで、心の健康が保たれました。これから続く就活を考えると、良い選択だったと今では思っています。
就活垢を消したSNSは、就活の情報収集ではなく、旅行やお店探しに使うようにしています。就活で疲れた時に、次の楽しみを作ることでモチベーションを保っています。
SNSから有益な情報を得られることもあり、「使わない方がいい」とは言えません。
ただ、よく分からない情報に振り回されたり、他人と比較してしまったりするなら、距離を置くことも必要だと学びました。自分に合った方法やペースで情報を集めれば、少しは軸がぶれずに就活を前進させられるかな、と感じます。
(文:中井舞乃、デザイン:高木菜々子、編集:野上英文)