受験の記憶「就活も上手くいかないのでは」現れた学生メンター
2023年6月20日(火)
高校時代に通っていた塾には、受験勉強のサポートをしてくれるチューターがいました。年齢の近い先輩が、親身になって受験や進路の相談に乗ってくれたことで、多くの悩みや不安が解消されたことを覚えています。当時の自分にとって、とてもありがたい存在でした。
将来の進路選択で大きな決断を迫られるという点で、受験と就活は、同列に並べて語られることが多いです。

大学3年生で就活を始めて、大学受験の時に味わった「嫌な感覚」を思い出す機会が最近は増えたように感じます。
これからの人生を左右するであろう重要な選択を迫られている緊張感。先の未来を予測できないことから生まれる焦り。どちらからも、逃げられません。
今回もうまくいかないのではないかーー。
受験に失敗した苦い経験を持つ私は今、心の根底にある不安をどうしても拭えずにいます。
似たようにみえる「受験」と「就活」ですが、今後の人生に与える影響という点は大きな違いがあるようにも思えます。
受験の結果がどうであれ、大学生になることはできました。
ただ、もし就活に「失敗」すれば、今までの人生で積み重ねてきたものが、すべて無駄になってしまうのではないだろうか......。そう不安を感じています。
両親に守られてきた学生という立場から、すべての責任を自分で背負う社会人という立場への転換も、就活への恐れをいっそう強くしているのかもしれません。
こうしたさまざまな不安や焦りに呑まれそうになった就活生の私は、かつての受験の時のように「頼れる人が身近にほしい」と感じていました。

ある日、就活を経験した他大学の先輩から「就活コミュニティ知っている?」と尋ねられました。その先輩も利用したと聞いて、私も関心を持ちました。
不安や焦りの感情から、私は就活用のコミュニティに加入してみました。
この就活コミュニティは、全国の大学で展開されており、運営はNPO法人で学生が中心メンバーだといいます。
コミュニティは、これから就活をする大学3年生に対して、すでに就活を終えた、もしくは就活中の大学4年生が「メンター」としてつくというもの。
メンターは、ES(エントリーシート)添削や面接練習といった就活に関わるさまざまな対策をサポートしてくれます。
ホームページをみてみると、日系の大手企業やスタートアップなどが「提携企業」として名を連ねています。
コミュニティの運営費は、こうした企業から出ていると聞きました。参加した就活生に企業の説明会といったイベントが紹介され、その「学生との接点」を得る見返りとして企業支援金が出され、コミュニティが運営される仕組みだとも説明がありました。
このため大学生は、完全に無料でサービスを利用できるというのです。
大学のキャリアセンターを利用せず、このコミュニティのみを活用して就活を乗り切る先輩も多いとも聞き、その仕組みや実態に驚きました。

親しい先輩に紹介してもらって加入したものの、「無料でサポートを受け放題」というあまりにもお得な話です。
「本当に役に立つのか」「無料なんてウソではないか」「そもそも怪しい団体じゃないのか」などと、疑いの気持ちがありました。
「合わなければすぐ抜けよう」。そう思いながら、簡単なアンケートに回答しました。
そのアンケートから自分が希望している業界から内定をもらったメンターをつけてくれました。私は人材業界やメディア業界を志望しており、人材業界から内定をもらったメンターがすぐについてくれました。
メンターとの初めての面談は、Zoomを使ったオンライン実施でした。
初回は1時間ほど。互いに自己紹介をすると、メンターからコミュニティの理念や活動内容についての説明がありました。最後に次回の面談日程を調整します。
次回の相談内容については、これと決まった内容や進行のプログラムがあるのではなく、就活生が「メンターにしてほしいこと」を依頼する形でした。
オンラインの画面越しに話したメンターは、同じ大学の先輩であり、初対面ながら、人柄も明るく、親しみやすい人でした。
就活を終えたばかりの4年生で、大手企業への内定も複数もらったと聞きます。そして「就活に関することは何でも聞いてほしい」という言葉ももらい、心強かったです。
私と同じように就活コミュニティに参加している友人たちに話を聞くと、メンターにも「当たり外れ」があるそうです。私は相性が良さそうで正直ほっとしました。

メンターによるES添削や面接対策が始まりました。例えば、人材業界の面接でよく問われる内容について話し合いました。
メンターからは志望動機だけではなく、10年後に自分がどうなっていたいかといった将来のビジョンがよく問われると教わりました。
人材業界は、キャリアアドバイザーやエージェントなど他者の人生の選択に伴走していく仕事です。自分の将来ビジョンを言語化できない人に、自分以外の人生の大事な選択となる転職やキャリア相談は務まらない、というわけです。
そう聞いて考え始めた私の「将来のビジョン」ですが、まだ考えている最中です。言語化していく難しさも感じていますが、メンターとのやり取りの中で少しずつ見えつつあります。

4月頭に利用を始めてからこれまで行った面談は計3回。今では日常的にも相談に乗ってもらってます。
正直なところ、まだ「本当に信じ切ってよいのだろうか」といった若干の不安は残っています。就活は「これをやれば必ずうまくいく」といった保証もありません。
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メンターをはじめ、周囲の言うことが必ずしも正解だとは限りません。ただ、ある程度、活動に慣れ親しんだ今では「頼りになる先輩の意見を聞いて考えてみよう」という気軽な気持ちで、コミュニティの利用を続けさせています。
就活をサポートしてもらえる環境を作った今、あとは行動あるのみだと感じてます。面接などを実際に経験して、どんどん力をつけていきたいです。
私は大学3年生になっても受験の苦い思い出を引きずって、将来に明るい気持ちを持てずにいました。ただ、支えてくれる周囲の言葉を受けて、最近では前向きな気持ちを持てるようになりつつあります。中でも参加したコミュニティは、就活で一歩を踏み出すきっかけを与えてくれました。今後も活動からヒントを多く得られればと思います。
(文:髙栁綾、デザイン:高木菜々子、編集:野上英文)