同僚と一緒にBARを訪れたのは、都内の人材紹介会社で働く27歳のタクヤさん(仮名)。
前職は地方の製薬会社のMR(医療情報担当者)として営業を担当し、2年前に現職の会社に転職しましたが、かつて憧れたコンサル業に転身するかで悩んでいるようです。
“しごと相談BAR”、本日も開店です。
同僚と一緒にBARを訪れたのは、都内の人材紹介会社で働く27歳のタクヤさん(仮名)。
前職は地方の製薬会社のMR(医療情報担当者)として営業を担当し、2年前に現職の会社に転職しましたが、かつて憧れたコンサル業に転身するかで悩んでいるようです。
“しごと相談BAR”、本日も開店です。
午後7時すぎ。店内のテーブル席に、同僚2人とビールグラスを傾けるタクヤさんの姿がありました。
タクヤさんが今の人材紹介会社に転職したのは約2年前。新卒で入った製薬会社でMRとして営業を担当し、その後、人材紹介会社に移りました。
タクヤ「僕は関東地方で生まれ育って、大学で初めて東京に出てきて卒業後は、地方の製薬会社でMRとして3年間、営業を担当しました」
「コロナ禍でキャリアを考える機会も多くなって、人材紹介会社に転職して2年になりますが、数年前に憧れたコンサルになりたくて、悩んでいます」
「チーン」
同席していた同僚が手元のベルを鳴らしました。
本日、BARでアドバイザーとして席に座るのは、転職支援のエージェント「JACリクルートメント」で15年以上経験を積み、現在は独立したキャリアカウンセラーの山川裕子さんです。
タクヤさんは前職のMRから人材紹介会社に転身した経緯を説明しました。
裕子「タクヤさんはなぜ、MRから今の仕事に?」
タクヤ「MRやっていた頃、ちょうどコロナ禍で、自宅にいることも多かったんです。自分のキャリアを考える時間が多くなっていて、MR業界以外の業界でも経験を積みたいと思い転職活動を始めました」
「当時、自分の中で『これをやりたい』というのはありませんでした。医療業界のことは3年勤めてある程度分かっていたので、もっといろんなビジネスを見たいなと思った時に、相談した転職エージェントの方から『人材かコンサルはどうか?』と提案されたんです」
「当初、コンサルはクールでかっこいいというイメージがあり憧れていたんですが、たまたま面接を受けた人材紹介会社から内定をもらって、今はエージェントとしてキャリアアドバイザー(CA)をしています。最初からすごく人材業界に興味があったかというと、そうではないんです」
憧れの職業「コンサルティング」。
なぜ、コンサルティング業界なのか──。タクヤさんがアドバイザーの裕子さんに力説しました。
裕子「CAは自分で希望したんですか?」
タクヤ「はい。MRの営業ではお医者さんの個人対応や法人対応として病院とのやりとりがあり、個人・法人とも中途半端な感じでした。それであれば一人ひとりに向き合える個人の方をやってみたいと思って。でもCAになってモヤモヤしているんです」
裕子「何にモヤモヤしているんですか?」
タクヤ「今の会社はすごく好きです。業務内容も好きか嫌いかでいうと好きなのですが、転職活動でコンサルを受けなかったことに少し後悔しています。コンサルへの憧れみたいなところがまだ残っていて、そっちの道に進みたいなと思うことがあるんです」
裕子「なぜ、コンサルに興味があるんですか?」
タクヤ「事業を作る経験を積み重ねていきたい、という考えからコンサルという選択肢が出てきたんです」
「今の会社に入った決め手も、社内制度で新規ビジネスが提案できる環境だったからでした」
「CAの経験で、確かにいろんなビジネスを知ることはできました。そこは自分の中でクリアしたんですが、実際に事業を作ってみた時に、どういうことを考えて進めていかなければいけないのか、スキームがないとダメだなぁと思っています」
タクヤさんは社会人になって、実は大きな挑戦をしたことを明かします。そこにヒントがありました。
裕子「タクヤさんはCAとしてコンサルティング業界の求職者と話しているので知っていると思うけど、一般的な経営コンサルティング会社では、プロジェクト単位のチームで動いているから、未経験で入ると最初はアソシエイトとして一部分のみ関わるところからスタートするよね」
タクヤ「1〜3年くらいはそういうところから始まってしまって、そこの年数を考えると、やはりそこに決めかねる部分はやっぱりあります」
「コンサルの方々、いろんな業界の求職者とお会いする中で、結局最初にいた医療業界への思いが強いことに気づいたんです。今後どういう道を歩むか分からないですけど、最終的にはもう1回、医療業界に戻りたいなという気持ちも正直あります」
裕子「なぜ、そんなに医療業界への思いが強いの?」
タクヤ「MRから現職に転職する前に、実は医学部受験してるんです」
「大学は理系とか医学部ではなかったのですが、恩師を膵臓がんで亡くした経験からMRになって、MRをやっているうちにやっぱり医学を学びたいという気持ちが出てきたんです。社会人だけど医学部受験に挑戦しました。
勉強している時間はすごくたのしかったんですが、試験では問題が全く解けなくて終わってから泣きました。それほど医療業界への思いが強いんです」
裕子さんはこれまでのタクヤさんの話から、可能性がある業界を提案します。
裕子「そこまで医療に興味があるというのは、そこにタクヤさんの可能性がある。軸は医療業界だと思う」
「コンサルを本気でやりたいと思っているなら、やってみた方がいいと思う。けど、事業を作る経験を積みたい、経営を学びたいというタクヤさんの希望を叶えるなら、必ずしもコンサルティングファームでやらなくてもいいかもしれない」
「例えば医療業界のコンサルではなく、医療業界のベンチャー企業に転身してみるとか。そこでも新規事業に関われる可能性は高いだろうし、話を聞いていても医療の道に進んだほうがタクヤさんの幸せが満たされると思う」
タクヤ「確かに話していて自分の軸は『医療業界』で、自分は医療が本当に好きなんだと思いました。コンサルは憧れだったんだなぁって。ありがとうございました」
タクヤさんは対話の中で自分の軸を言語化し、進むべき方向性を定めたようです。
◇
働く若者たちの本音が聞こえてくる「しごと相談BAR」。連載シリーズは隔週で金曜に公開予定。
(取材・文:比嘉太一、撮影:飛塚倫久、デザイン:高木菜々子、編集:筒井智子)
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