2023年3月までの約1年間、東京都が開設した「TOKYOシェアオフィス墨田」で現場責任者兼コミュニティマネジャーとして活躍した新福さん。インタビューの冒頭に、当時の仕事内容について聞きました。
ーーコミュニティマネジャーとして、どんな仕事をされましたか?
新福:「TOKYOシェアオフィス墨田」は、墨田区に在住や在勤の人たちを対象に、コロナ禍で始まったリモートワークの働く場を提供するための施設です。
コミュマネの仕事としては受付のほかに、地域の人たち同士がコラボレーションできるような企画づくり、イベント運営をしました。
ーー公的なコミュニティ運営の楽しさと難しさを教えてください。
新福:難しさでいうと、行政(東京都)が開設した施設であるため、企業が設けたコミュニティスペースに比べ、予算感やリスクへの配慮がより一層求められたと思います。また「TOKYOシェアオフィス墨田」が開設された背景をしっかりと理解し、運営につなげる必要もありました。
イベントで外部からゲストを招く際、「本当にこのテーマでいいのか?」「ゲストはこの方でいいのか?」といった議論もよくしました。
もちろん、守るべきポイントが多いからこそ、その枠組みの中で面白いイベントを作ろうと工夫することは、醍醐味でもありましたね。
楽しさでみれば、「その場所ならではの出会い」があることでしょうか。僕は、品川区五反田に住んでいるので、これまで墨田区の地域コミュニティに関わることは一度もありませんでした。
1年間の新しい出会いは、僕にとってすごく新鮮で、仕事や生きる上でのヒントにもなりました。
ーーコミュニティマネジャーを始めたきっかけは何でしょう?
新福:僕自身が、リアルで人と会うからこそ生まれる温度感とかパワーみたいなものが、ものすごく好きなんです。2016年には、いろんな人に会って、そのエネルギーを感じるために、世界一周しながら、各地のお祭りを巡る旅をしました。
日本に戻って、世界一周の旅先で感じたようなエネルギーを再現できる、場づくりを担う仕事って一体なんだろう......と。そこで「コミュニティマネジャー」という職種に興味を持ちました。
ーー世界一周、お祭りを巡る旅はなぜ始めたのですか?
新福:旅の総合WEBメディア「TABIPPO」主催のコンテストで優勝したのがきっかけです。大学生1500人が、それぞれ自分らしい旅についてプレゼンするのですが、優勝者は賞品の世界一周航空券で「自分だけの旅プラン」を実現できるというコンテストでした。
当時、僕は人気バラエティ番組『世界の果てまでイッテQ!』に出演している宮川大輔さんを超える「お祭り男」になる、と約1000人の前でプレゼンしました。
ーー思い出深い海外のお祭りはありますか?
新福:チーズ転がし祭りです。イギリスのクーパーズ・ヒルという傾斜45度の急な坂があるのはご存じでしょうか? そこにチーズを転がし、参加者たちも誰よりもチーズを早く取ろうと転げ落ちるレースです。実は僕、その年のレースで3位を獲得したんです(笑)。
イベント自体も楽しかったんですが、自分とまったく違う世界で生きている人たちと話し、強い刺激を受けたことを今でもはっきり覚えています。
ーー世界のお祭りで感じたエッセンスやノリは、コミュニティづくりやイベント運営に生かされているのでしょうか?
新福:そうですね。「TOKYOシェアオフィス墨田」では1時間コーヒーを飲みながらラフに対話する会がありまして、毎回ミニゲームを考えていました。
例えば、A4用紙を20〜30枚ほどで「最も高いタワーを作る」というゲームをやりました。紙を丸めたり、土台にしたりなどやり方は自由です。想定以上に、チームごとに対話が生まれて白熱しましたよ。その後の対話につなげるアイスブレークです。
他にもいろんなゲームなどを実施しているのですが、参加者の皆さんの気持ちが「おっ」となるような「驚き」「楽しさ」、時には「しょうもなさ」を入れ込んでいます。
世界のお祭りほどではないですが、心を揺さぶる体験を組み込むことは常に意識していますね。
仕事の中で、最も楽しいと感じる瞬間はどんな時ですか?
出会いの創作
コミュニティマネージャーが介すことで生まれた新しい出会いや、お仕事の交差を生めた時にとても楽しいと感じます。また、リアルな場を作り、生の温度感でお客様とコミュニケーションをとれた時にとても嬉しいと感じます。お客さまの表情や声のトーン、さまざまな非言語情報もキャッチして、お客様に合ったコミュニケーションや企画を生み出すことがとても楽しく感じます。僕自身も、リアルな拠点に身を置くことで、その土地でしか出会えなかった方と出会えることはとても奇...
跡的と感じています。「コミュニティ」という抽象度の高い言葉だからこそ、自由度が高い反面、難しいところも。でもだからこそ、そのコミュニティにしっかり価値を生み出せたときに自分の存在意義をしっかり感じれることもできます。
ーーコミュニティマネジャー以外の仕事も教えてください。
新福:一つはプロコーチです。
小学生から社会人まで幅広い年代に対してコーチングをしています。
世界一周のあとにうつを経験して、人とのつながりに熱狂するだけでなく、HSP(繊細/敏感)の気質を持っていることにも気づいたんです。こうした自己理解を経て、同じような悩みを抱く人の気持ちを軽くするコーチングを得意としています。
ーー小学生にもコーチングですか。どんな需要があるのでしょう?
新福:社会人が受けているコーチングとは若干異なり、「気軽にお話しできるお兄さん」という役割が求められていると思います。
親と子、先生と児童という関係が既にある中で、僕としては子どもたちがやりたいことを実現させるサポートをすることが大事だと捉えています。
ゲーム機で遊ぶことを禁じている家庭がありますが、僕のもとでは子どもがゲームをしたいと話してきた時は、一緒にできないかと考えます。基本的に、子どもたちのやりたいことを駄目だと蓋にせず、どうやったら実現できるか考えるように意識しています。
ーー他にも「顔」はありますか?
新福:「熱波師検定A」という資格を持っています。サウナでは、よく暖められたストーンに水をかけて蒸気を出す「ロウリュ」という入浴方法があります。その際に、タオルで蒸気をあおぎ、熱風でサウナーたちの体温を一気に高めていくのが熱波師の仕事です。
先日も、屋外フットサル場に100人ほど集め、サウナを体験してもらうイベントを実施して大盛況でした。
ーー熱波師検定でAがあるってことは、Bもあるんでしょうか?
新福:B・SUS・A・Sという4種類のクラスがあります。熱波師検定Aを取得するには、実際のお客様に向かって実技することになり、合格すると、ようやく熱波師見習いとなります。
元々、サウナイベントをやりたいと思っていたんですが、そこに「熱波師検定A」を持つ熱波師がいた方が、参加者の満足度が上がりそうだなと思って取得しました。
ーーコミュマネにイベント運営、コーチング、熱波師とさまざまな活動をうかがいましたが、どう一つにつながっていますか?
新福:コーチングに限っていうと今はオンライン実施も多いですが、人と人の関係や場をつくるという意味では、どの活動も一貫していると感じています。
3月に「TOKYOシェアオフィス墨田」を卒業したばかりですが、ありがたいことに既にいろんな方から一緒に新しい取り組みをしようとお声がけいただいています。これからも、人が集まる空間をつくれると思うとワクワクしますね。
この職業について未経験の人に説明するとしたら、どんなキャッチコピーをつけますか?
次回は、宿野部真央さん(#01出演)の紹介で、モデルをしながら温泉施設のコミュニティマネジャーをする森田菜月さんへのインタビューを公開予定です。
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(文:池田怜央、映像編集:長田千弘、デザイン:高木菜々子、編集:野上英文)