20〜30代のキャリア術。鍵はフィット、タグ、ネットワーク

2023年6月14日(水)

いろんなバイトの経験で知見を広げる

──まず、これから就活する大学生は何から始めたらいいのでしょう?

村上 :学生は比較的時間があるので、希望している業界とは全然違う経験をするのがいいと思います。

例えば、IT業界を希望している学生が、農作業みたいに考えてもみなかった業界でバイトをしてみるとか、そういう経験をすることをおすすめしますね。

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──村上さんは学生時代にどんな仕事を経験されましたか。

村上 :僕は学生時代、個人事業主として、主にプログラミングで稼いでいましたが、建築現場で資材を担ぐ肉体労働も経験しました。

音楽が好きだったので、コンサートの設営のバイトもしました。無料で音楽ライブが聴けるというのに釣られてバイトしたのですが、年齢も違えば、経験も違う人たちが集まって一緒に働くので、一言でいうと「ダイバーシティ」でした。

大学だけにとどまっているとバイアスがかかりやすくなります。大学には、似たような家庭環境の学生が集まっていることが多いので、同質性が極めて高いんです。

そこから抜け出して知見を広げていくには、いろんなバイトを経験するのがおすすめです。

社会に出ると、クライアントや上司、同僚など多様な人たちを相手にしなければなりません。学生時代にいろんな人たちと関わった経験は、社会人になってからすごく生きてくると思います。

会社を選ぶ軸は「カルチャーフィット」

──就職活動中の学生や20代の若い人たちは、どういった観点で会社を選んだらよいでしょうか?

村上 :自分との相性ですね。周りで働いている人に、「あなたは今、仕事が楽しいですか?」と聞いてみてください。楽しいならば「何が楽しいんですか?」もセットで。

それによって自分との相性がまず分かります。

「楽しい」という話に共感できるのであれば、この会社は「面白いかもしれない」「じゃあ、もっと調べてみよう」「もっと他の社員の人にも聞いてみよう」となりますよね。

自分との相性はカルチャーフィットと言い換えてもいいでしょう。「楽しい」ポイントに共感できる人と一緒に働く環境が健全だと思います。

例えば「初任給がいい」といった理由だけで選ぶとやっぱりつらいと思います。仕事は基本的につらいことが多いので、カルチャーフィットしていることは大事なんです。

取材に答える村上さん

「やりたい」と「求められること」は違う

──就職してすぐに、ちょっと方向性が違うと感じたらどうしたらいいのでしょうか?

村上 :1年目は半分研修です。1年半はがむしゃらに頑張ってほしいです。研修が終わって部署に配属されてからの1年間は、目の前のことにひたすら集中してやってみる。そこで自分の中でやり切ったと思えるぐらいまで頑張れるかがポイントです。

もちろん、体調を崩したり、精神的に疲弊して心身がボロボロになるまで続けろとは言いません。

その時は、全力で逃げる選択も持っておくべきなんですが、基本的には自分が「やり切った」と思えるくらい徹底的に仕事に取り組まないと、方向性の違いは分からないと思います。

──配属先が希望通りにならずにすぐに辞めてしまうケースもありますよね。

村上 :評価されることと自分がやりたいことに、ギャップがあるのは当然です。「俺はこれがやりたい。けど、求められてるのはこっちだな」というケースはよくある話です。

なので社会人になったら、評価は自分よりも周りが決めることが当たり前だと認識するべきです。

まずは自分の所属部署で、自分のバリューを周りに認めてもらえるようにする意識で働いた方がいいです。そのためにはどうすればいいのかを考えて、がむしゃらに働くことをおすすめします。

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30代が自問自答すること

──社会人として経験も積んで、仕事でも活躍している30代の優秀な人材がいるとして、今の会社ではキャリア形成に不安を感じている場合はどうすればいいですか?

村上 :この先10年で何をしたいかですね。一度、自分のキャリアと冷静に向き合う必要があります。30代は結婚、出産などとライフステージの変化が大きい年代です。

自分の人生プランの中で、仕事をどう位置づけるか。今までやってきたことを棚卸しして考えてみるのです。例えば、市場価値を上げることを優先して転身するのか、そうではなく、自分がやりたいことを選択するのか。

自分自身と対話するべきですね。ただし、往々にして自分を分かっていない人が多いので、できれば、自分のことをよく知っている仲の良い友だちに忌憚のない意見を言ってもらうといいですね。

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タグを増やすことの重要性

──若い人たちも給与がなかなか増えないと嘆いています。どうすればいいですか?

村上 :若い人たちだけではなく、働いている全ての人たちに言えることなのですが、副業OKの会社であれば、積極的に検討した方がいいですね。

最初は自己分析から始めましょう。自分が持っているスキルや経験を書き出して、職務経歴書を作成してみてください。その上で、自分に「タグ」をつけてみるんです。

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──最近は就職面談でも「自分にタグをつけてください」といった質問が多くなったと聞いています。

村上 :ご存じの通り、「タグ」とは「荷札」「付箋」といった意味です。ウェブの世界では情報分類のための単語や短いフレーズを指します。

皆さんも「Twitterの投稿にタグ(ハッシュタグ)をつける」といった文脈で日常的に使っていますよね。

「タグ付け」 とはそのハッシュタグを自分にもつけるイメージです。例えば「IT業界で、中小企業相手に法人営業をし、顧客理解が得意な人」であれば、「IT業界」「法人営業」「中小企業相手」「顧客のことを理解するのが得意」のそれぞれがタグになります。このタグの掛け合わせがあなたの希少性です。

取材に答える村上さん

本業以外の経験で人的ネットワークを拡大

──20代、30代からタグを増やせば、将来的に40〜50代になっても道が開けますか?

村上 :一般的に、たくさんタグを持っている人は周囲から認知されやすくなり、転職や起業はもちろん、副業をする上でも有利になります。

自分のキャリアに強みを付加しようとする時、多くの人が思い浮かべるのは、資格の取得です。しかし、現実にはあまり効果を発揮しません。資格単体ではタグになりにくいのです。

それよりも、本業以外の経験を積むことです。そうした経験は強力なタグとなります。今の会社で頑張りつつ、どんな副業でもいいので実際にやってみて、自分のタグを増やすことをおすすめします。

同時に、自分がいる業界の内外に人的ネットワークを広げる努力を重ねてください。

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──人的ネットワークは大事ですよね。

村上 :ネットワークを通じ、タグを活用して自分に対する周囲の認知度を上げ、本業以外の仕事に興味があることを伝えていくのです。

そのうち、新規ビジネスを立ち上げようとしている人から、一緒にやりませんかと声がかかることがあるかもしれません。

ですから、ネットワークを広げるためにも、ぜひ副業や兼業など、パラレルキャリアを検討してみてください。

インタビューに答える村上さん

インプットは毎朝40分

──副業や兼業をするにあたって、情報のインプットが重要なポイントになります。村上さんのインプット術を教えてください。

村上 :基本的にインプットの時間は朝に設けています。朝のルーティンは決まっていて、毎朝午前6時半に起きます。

起床後はコーヒーとプロテインバーをかじりながら、NewsPicksや日経電子版、Twitterをチェックしたり、自分のSNSのフィードを確認したり、40分間ひたすら情報収集にあてています。

そこで気になった記事や情報は、タスクやメモなどが管理ができる「Notion」のフォルダに入れて、整理しています。

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──なぜ40分なんですか?

村上 :それ以上だと仕事に間に合わなくなるので、ハードリミットが40分になっています。

──SNSはかなり活用されているんですか?

村上 :そうですね。SNSはTwitter、Facebook、LinkedInを活用してます。LinkedInは主に海外のコネクションが多いので海外ニュースがメインです。

あと、メルマガも好きで、情報収集に使ってます。朝、昼、夕の時間帯に届くので、朝刊代わりに一通り読んでインプットしていますね。

取材に答える村上さん

──副業・兼業をするにもインプット術は大事になりますね。これらのルーティンは明日からもできそうです。

村上 :パラレルキャリアを身につけるためにも情報収集は大事です。ぜひ参考にしてみてください。

(取材・文:比嘉太一、野上英文、撮影:飛塚倫久、編集:筒井智子、デザイン:高木菜々子)