「私服」指定に違和感。就活生は「オフィスカジュアル」と読む

「私服」指定に違和感。就活生は「オフィスカジュアル」と読む

    JobPicks編集部の学生インターンが就職活動中の体験や当時感じた思いをつづります。振り返ると就活にはたくさんの不思議なルールがありました。まずは面接で服装を指定された際のエピソードから。就職活動で初めて着るリクルートスーツに加えて、新たに必要になったオフィスカジュアル。「個性を出しやすいように」と指定された服装ですが、実際はどうだったのか――。感じたことを記しました。

    鍬崎プロフイラスト

    目次

    いまだに気になる服装指定

    大学4年生の私は先日、第一志望の会社から内定をいただき就職活動を終えました。ただ2022年12月ごろから始めた就職活動を振り返ると、「就活って、なんでこうなの?」と感じることが少なからずありました。ほかの多くの就活生も同じ思いなのではないでしょうか。

    その一つが「面接での服装指定」です。

    就職試験の面接では、対面かリモートかにかかわらず、服装を指定されることがよくあります。

    就活卒業生日記
    Zephyr18 / iStock

    私が就活中に、企業からの案内で目にした服装規定は、次のいずれかの内容でした。

    • スーツ

    • 私服

    • 服装自由(スーツ不可)

    • 普段着ている服装

    こうした決まりを示すことが多い業界とそうでない業界があるようでした。私の志望した広告・PR業界は比較的ゆるめで、「私服」や「服装自由」と指示されることがよくありました。

    「服装:私服」...ユニクロに駆け込んだ

    私の場合、ある企業から1次通過と2次面接の案内について記されたメールに、こうした服装の指定がありました。

    「服装:私服」

    それまでの他社の選考ではスーツを着ていて、服装を特に気にすることはなかったのですが、初めて「私服で」と指定されて戸惑いました。逆に何を着ればいいのか分からなかったのです。

    とりあえずネットで検索してみます。出てきたのは、就活生の応援サイトでの次のようなアドバイスでした。

    「あくまでも就活の場なので、きちんとした服装、いわゆるオフィスカジュアルを心がける必要がある」

    「就活で私服を着用する場合はビジネスカジュアルを意識したアイテムがおすすめ」

    就活卒業生日記
    monzenmachi / iStock

    オフィスカジュアルにビジネスカジュアル......。どうやら本当の「私服」ではダメなようです。

    これらのサイトには、実際にどんな服装を選べばいいのかも紹介されています。男性はシャツにノーネクタイでジャケット、パンツはスキニーやチノパンをはけば問題ない、ということでした。

    「就活で着る私服はビジネスカジュアルなどTPOを意識する」

    「派手・奇抜なアイテムは避け、落ち着いた色とシンプルなデザインのものを選ぶとよい」

    こういった補足説明もありました。

    就活卒業生日記
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    面接は、1週間後に迫っていました。普段は古着屋で買ったアメカジ系やストリート系の服を好んで着ている私です。

    「オフィスカジュアル」も「ビジネスカジュアル」も持っておらず、急いでユニクロに向かいます。

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    売り場に行ってもよく分からなかったので、店員さんに聞きました。

    「すみません、オフィスカジュアルってどれを選べばいいですか?」

    薦められたジャケットやパンツなど、計1万円ほどで一式をそろえました。

    面接に真新しいオフィカジを着ていくと...

    迎えた対面式の面接当日。会場の待合室に入ると、数人の就活生がすでに待機していました。

    みんな私と同じように、真新しい「オフィスカジュアル」に身を包んでいます。似た姿で腰掛け、空を見つめながら静かに待っていました。

    この日は個人面接で、一人一人が順番に呼ばれます。いよいよ私の番が来て部屋に入ると、面接担当者も自分と同じような「オフィスカジュアル」姿でした。

    いつもなら緊張しがちな面接の直前ですが、その光景にバカバカしくもなりました。

    面接に合わせて、誰もが着なれない服をあえて選んで、同じような格好で緊張しながら順番を待つ。迎える面接担当者もおそろいの「私服」という名のオフィスカジュアルで、就活生と向き合う......。

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    これだったら別に、こっちは就活定番のスーツでもいいじゃないか。そう思いました。「私服」と指定しながら、ふたを開けると、全員が新品の割とキッチリした服を着込むことに、どれほど意味があるのでしょう。就活生の面接に臨む姿勢や心境も変わるものではありません。

    就活を終えて

    その会社とは最終的にご縁がなく、私は「服装:普段着ている服装(スーツ不可)」と指定してきた会社へ来春に入社することを決めました。

    服装の指定が自分のなかで決め手になったわけではありません。それまでの就活の服装指定については、何となくあきれて不満に思っていたので、この会社が示した「普段着ている」という言葉に良い印象を抱いたのは覚えています(この会社を受けた他の学生たちも、本当の「私服」で参加していました)。

    「自由な社風を感じてほしい」「就活生がありのままを出せるよう、服装からリラックスしてほしい」。そういった狙いから、採用プロセスで服装をカジュアルに指定する企業が増えているのは、就活生としては歓迎です。

    就活卒業生日記
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    一方、「就活ではこうすべき」という固定観念が広く根付いていることもあって、「私服」「カジュアル」といっても、結局は「スーツではないけど、スーツのような服装」を無難に選ぶ就活生も少なくありません。

    服を新たに買い足すという金銭的な負担だけでなく、「一人だけ場違いではないか」と悩んでしまう心理的な負担も増えるだけ、というのが実態です。

    就活を終えた今の私ならば、あの日の面接でこう聞けばよかったかな、なんて思います。「なぜ、この服装指定にしているのでしょうか?」「わざわざ指定した目的をうかがってもいいですか?」

    就活でお世話になったスーツもカバンも、そして「オフィスカジュアル」のセットも、社会人になって使う日のためにクリーニングに出して、今は自宅の押し入れの中で眠っています。

    (文:鍬崎拓海、デザイン:高木菜々子、編集:野上英文)