内定者「ガクチカだけじゃ不足」就活を乗り切る自分史のススメ

内定者「ガクチカだけじゃ不足」就活を乗り切る自分史のススメ

    就活で避けて通れない自己分析、ES・面接対策。活動が本格化してから「あれ、本当にやりたいことはなんだっけ?」「ESや面接で思いをうまく伝えられない」と“迷子”になってしまう学生も少なくありません。

    大手や学生に人気の企業に内定した3人を招いた座談会で、それぞれのコツをうかがいました。振り返ってみて、「自分史づくり」を勧める声が大きかったので詳しく聞きました。

    最後に「やってよかったこと」「やらないほうがいいこと」も、3つのポイントでまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

    目次

    未来のために過去をみる 「自分史づくり」

    内定者が明かす就活リアル

    ── みなさんは、自己分析をするとき何から始めましたか?

    髙浦 「過去・現在・未来」をしっかり振り返ることから始めました。とくに時間をかけたのは、過去を振り返る「自分史づくり」です。

    生まれてから今まで、年齢ごとに起こったエピソードを書き出して、「そのとき発揮できた強み」「自分がどう変化したのか」を整理しました。その後、それぞれのエピソードを「成長度合い」「努力度合い」「成果度合い」と3つの軸で自分なりにランキング付けしていきました。

    岩澤 実は私も、3年生の12月ごろに「自分史づくり」をやりました。ちょうどその頃、就活の出口が見えなくなってしまって。「結局自分は何がしたいんだっけ」と悩んでしまったんです。

    そこで、就活を一回ストップして「自分史づくり」をする時間を取り、「自分が大事にしてきたこと」「モチベーションが上がった瞬間」を整理し直しました。

    大澤 私の場合は、これまでの経験を行動ベースで洗い出して整理するという作業をしました。具体的には、過去の経験の中から「誰かとコミュニケーションする」「1人で作業する」「アイデアを考え、企画にまとめる」など、直感的に面白いと感じた行動について、「動詞」で書き出していくんです。

    行動ベースで書き出すと、自分が面白いと感じることだけでなく、「面白くないと感じること」までわかってきました。この作業を通じて、やりがいを感じられることや向き・不向きがわかって良かったと思っています。

    ── 髙浦さんと岩澤さんは、なぜ「自分史づくり」に力を入れようと思ったのですか?

    髙浦 自己分析をやってみて思ったのですが、いわゆる「ガクチカ」(学生時代に力を入れたこと)だけ振り返っても、自分の根本にある価値観を理解するには不十分なんですよね。

    根本にある価値観や想いをしっかり理解した上で、ベストなキャリアを選択したいと考え、時間をかけてでも、生まれてから今までの全てを見直す必要があると思いました。

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    maroke / iStock

    岩澤 私の場合、面接で「何をやりたいんですか」と聞かれるたび、だんだん自分のことがわからなくなってしまって。いったん、未来を考えることから離れて、過去に自分が積み重ねてきたことを見つめ直したら、そこにヒントがあるんじゃないかと思ったんです。

    周りでも、「自分史づくり」をやる人は結構いたような気がします。

    自分史づくり、何から始めればいい?

    ── 「自分史づくり」では、どんなことを大切にしましたか?

    髙浦 あらゆるエピソードにおける、「モチベーション/行動の源泉となる想い/自分の気持ちや考え」を思い出したり、見つけ出したりしました。

    例えば、小学生のときにピアノと縄跳びを頑張っていたことと、高校時代にチアリーディング部やボランティアを頑張っていたことは、一見あまり関連性がないような気がしますよね。

    でもその根底には、共通する考えや原動力となる想いがあります。そのような自分に一貫する軸や基準をもとに、自分に合う企業を探していきました。

    その後、短期〜長期のキャリアイメージも考えました。「ファーストキャリアに求めること」「キャリアのゴール(短期、中期、長期)」を書き出すことで、未来についてしっかり考えられたと思います。

    中長期的な目線を持てたことで、内定のための就活ではなく、理想のキャリアを歩むための就活なんだと、捉え直すことができました。

    岩澤 友だちに私の性格や特徴について質問してもらって、それに答えるということもやりました。自分にとっては当たり前でも、他の人から見ると特別なことってありますよね。

    自分だけではなかなか客観的になれず、気づけないことも多かったです。人から「岩澤さんって、こんなところが強みだと思うけど、それはなぜだと思う?」と聞いてもらうことで、新しい発見がありました。

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    岩澤さんの自分史(一部抜粋)。1つのできごとについて、客観的事実、当時感じたこと、気付きを整理した

    ESも面接も相手目線でわかりやすく

    ── ES(エントリーシート)を書く際に気をつけていたことはありますか?

    岩澤 同じエピソードでも、企業によって強調したい部分を変えることを意識していました。そのために、企業がどのような考え方をしているのかを探ることを心がけていましたね。とくにOB・OG訪問をしたときは「(仕事をする上で)社内でよく言われることってありますか?」と聞いていました。

    例えば「問題解決能力のある人を求めている」と発信している会社でも「目の前の小さな課題を自分ごと化して解決すること」を大事にしている会社と、「たくさんの人が困っている問題を見つけ、解決する仕組みをつくること」を大事にしている会社では考え方が異なります。

    髙浦 わかります。私も企業が重視するポイントを正しく理解し、そのポイントをわかりやすく伝えるべく簡潔な文章にすることに気をつけていました。

    ESも周りの人に見てもらい、伝えたい内容と、文面から読み取れることが一致しているか確認するようにしました。ただ、ESの内容自体は、自己分析以上に盛らないよう気をつけましたね。就職活動はあくまでも企業とのマッチングなので、背伸びをして入社をしても幸せになれないと思っていました。

    大澤 私は2人とは違って、ぶっちゃけ誰が見るか予測できないESを、企業ごとに内容を変えるのは面倒だなと思っていました(笑)。

    ずっと考えていたのは、「この人と話してみたいな」と思ってもらえるESにするにはどうすればいいかということです。例えば、コミュニティの領域については、インターンシップで実務に携わっていたので、他の学生より詳しい自信がある。そういう、周りの学生とは少し違う経験を書いて、質問したくなるフックをつくっていきました。

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    盛らない、嘘をつかないが鉄則

    ── 面接対策として意識していたことがあれば教えてください。

    大澤 面接だからといってあまり気負わず、特別な意識を持たないようにしていました。強いて言えば「よく見せようとしない」ことには気をつけてはいましたね。「あ、自分、今嘘つこうとしているな」と思ったときは、ブレーキをかけるようにしていました。

    岩澤 そうですね、想定質問として丸暗記したことを答えることより、面接官と対話して、本音で話せる雰囲気づくりを重視していました。とくに、初対面の相手なので、自分と同じ温度感で伝わっているのかは意識して話していました。

    もちろん、わかりやすい言葉で話すことは基本として大切だったと思います。

    髙浦 私は話が長くなってしまう癖があるので、結論ファーストで話せるように練習しました。具体的には30秒から1分以内で志望動機やガクチカなど、代表的な質問に答える練習をしましたね。

    あと基本的なことですが、相手の目を見て大きな声でハキハキと話すことも、やっぱり大切だと思います。

    やってよかったこと・やらない方がいいこと

    ここまで3人の先輩に、リアルな自己分析、ES・面接対策について聞いてきました。あらためて3人の話をもとに、やってよかったこと・やらない方がいいことをまとめてみました。

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    ガクチカのみならず、大切にしてきた価値観やモチベーションの源泉、興味・関心を掘り下げ、自分の言葉で誠実に企業に伝えることが大切だということですね。

    ※本記事は2023年3月31日時点の情報をもとに作成しています。登場する学生の就職先は変わる可能性があります。

    (取材・文:種石光、デザイン:高木菜々子、編集:石川香苗子、筒井智子)