調査は同社が5月に実施し、就職活動中の大学生と大学院生計5062人が回答しました。
生成AIについて「利用経験がある」と答えた学生は39.2%で、そのうち「就活で使った」は18.4%でした。
生成系AIが質問に答えるサービス(「ChatGPT」など)の利用経験
また、就活にAIを利用することについての考えは、「使いたい」が34.8%、「使いたいと思わない」が37.8%で、ほぼ同じ割合でした。
AIによるチャットサービス(ChatGPTなど)を就活で活用することについての考え
また、「ChatGPT」など先進的なAIの登場によって、就職観や志望する業種・職種・企業などの選択に影響があったかの質問に対して、最も多いのは「影響を受けたことはない」(43.6%)で、次いで「どちらともいえない」(41.3%)が続き、「影響を受けたことがある」学生は15.3%になりました。
学生、「ChatGPTが自分の盲点を教えてくれる」
「使いたい」という学生からは「ESの添削で使いたい。AIなら24時間利用できる」「面接の逆質問を考えるときや、競合他社と比較するときに使いたい」などの声があがりました。
肯定的な学生の意見
文系男子:ES添削の場面において使いたい。人に添削してもらうには日中しかできないが、AIを使えば 24時間いつでも添削してもらえ、添削待ちの時間を削減できるため。
文系女子:志望動機などを自分でまとめられないときに、ChatGPTに箇条書きで自分で志望理由を書い てまとめてもらうことに利用したい。まとめてもらったものを参考にすることで、効率化を図ることができると思う。
理系女子:エントリーシートなどで自分の強みを言い換えて弱みを作ってくれるなど、自分では盲点だったところを教えてくれるため。
理系女子:企業の情報と自身のエントリーシート記入内容を読み込ませ、面接で聞かれそうな設問を想定させている。自分では思いつかない角度からの質問は実際の面接でも役立った。
一方、「使いたくない」と答えた学生からは「セキュリティー面が不安。利用がばれたときに不利になるのでは」「AIでは自分の経験や考えを完全には反映できず、ありきたりな履歴書になってしまう」などと懸念する声もありました。
否定的な学生の意見
文系女子:一度就職活動で自分で調べる方法以外に情報を入手したいと思い使用したが、その情報が間違っており確実に信用はできないため。自分で調べて情報収集するのが1番確実だと思った。
文系女子:まだセキュリティー面で不安であること、チャットサービスを使ったことが企業側にばれたときに不利にならないか不安であるため。
理系男子:自分のことや考えたことを自分の言葉で述べることが大事なので、あくまでAIのような第三者が考えたものをそのままパクるのは、他の就職活動者との違いが出てこないおそれがあるから。
文系女子:自分らしさが表現できず、他の就活生との差別化ができないと考えるから。
調査結果を受けて、マイナビの調査担当者は学生の中でも意見が分かれていると強調した上で、次のようにコメントしました。
マイナビ:利用用途の中には、不正確な情報が含まれている可能性や個人情報漏洩の可能性などの注意が必要なものもありましたが、AIの得意・不得意を理解しあくまで補助的な用途で活用したい人が多いことも分かりました。
利用に際してはAIの特性を理解しツールとしてうまく活用するためのリテラシーが重要だと考えられます。
ChatGPTなどの生成AIに詳しい国立情報学研究所の佐藤一郎教授は、就活でAIが浸透してきている現状について、「1人あたりのエントリー数が増えたことが背景にある」と指摘します。
佐藤教授:AIによるES作成に関して、AIに頼って書類を作成し、書類選考に通ったとしても、その後の面接で、(就活生の)能力や知識が分かってしまいます。
一方で企業もAIを使ってESを選別している実態があり、就活生がAIを使ってESを作成することは責められないのではないかと考えます。
今の就職活動では、Webで容易にエントリーできるなど、オンライン化が当たり前になった中で、採用試験が「数をこなす」という作業プロセスとなっています。
AIの活用は、そんな状況で就活生の1人あたりのエントリー数が増えたことが背景にあります。つまり、今の就活ではAIに頼らざるを得ない状況です。
根源的には就活する学生がエントリーを絞って、選考を受けられる環境を作ることが大事で、学生もエントリーに関して、数打てば当たるといった考え方を改める必要があります。
現在の就活の選考プロセスそのものを見直さないと、いま以上にAIを活用する学生が増えてくるのではないでしょうか。
(取材・文:比嘉太一、編集:中村信義)