就活生向けの就職情報サイト「リクナビ」などを運営しているリクルートは6月5日、大学生対象の就職活動に関するオンラインセミナーで、同社の社員が学生を装って質問する行為を繰り返していたと発表しました。同社は20件のセミナーで実施していたことを認めた上で、「不適切であり、大学や学生に不誠実だった」と釈明しています。同社のセミナーに参加した学生からは「就活が不安だからこそリクナビを使っていたのに、すごくショックです」などの声があがっています。
就活生向けの就職情報サイト「リクナビ」などを運営しているリクルートは6月5日、大学生対象の就職活動に関するオンラインセミナーで、同社の社員が学生を装って質問する行為を繰り返していたと発表しました。同社は20件のセミナーで実施していたことを認めた上で、「不適切であり、大学や学生に不誠実だった」と釈明しています。同社のセミナーに参加した学生からは「就活が不安だからこそリクナビを使っていたのに、すごくショックです」などの声があがっています。
同社によると、問題となったセミナーは就活の動向(内定率や求人倍率などの説明)やES(エントリーシート)の書き方などを教える内容でした。
セミナーは2021年4月〜2022年10月までに開催。学生の参加は無料で、大学から依頼を受けて実施するセミナーや同社が主催するセミナー20件で行われていたといいます。
同社の社内調査によると、同社の大学支援推進部(現・学生キャリア支援推進部)の社員らはセミナーの質疑応答の際に、学生を装って「オンラインのイベントは出入り自由ですか?」「イベントには私服で参加しても良いですか?」などの質問をセミナー講師らにあてて書き込んでいました。
社員たちの中では業務で使用するチャット上でこうした行為を「サクラ」と呼び、一部では上司が指示したり、指南するケースもありました。
同社は一部の報道を受けて、6月5日に就活サイト「リクナビ2024」と「リクナビ2025」で「一部報道について」と題する謝罪文を公表しました。
大手就活サイトを運営する会社のサクラ行為に学生からは驚きや戸惑いの声が上がっています。
リクナビのWEBセミナーに参加したことがある兵庫県立大学に通う3年生の女性(20)は「就活に対して大きな不安を抱いてるから信頼できるリクナビを使っていたのに、このような行為は本当に最悪、こんなことされたら使いたくない」と呆れた表情でした。
関西地区の大学に通う女性(20)は「サクラとしてなりすまして質問したり、それが常態化したりしている点は問題。企業側からお金をもらっている立場としては、まずいことだと思います。
学生を装わないで主催するスタッフからの質問の一例として示せばよかったのではないかと思います」。
この女性は、リクナビをめぐっては過去にも個人情報を本人の同意なしに企業に提供していた問題があったことにも触れ、「もうリクナビが主催するイベントには参加したくないです」と不満を口にしました。
現在、就職活動中の大学3年の女性(20)は「セミナーに不安だから参加しているのに、『装う』という行為は信用を失くすし、嫌な気持ちになる」と話しました。
一方で、一定の理解を示す学生もいました。
リクナビのWEBセミナーに参加したことがある関西学院大学2年の男子学生(20)は「サクラ行為は確かに学生に対して不誠実ですが、オンライン説明会ではなかなか学生側から質問が出ないので、サクラ行為をすることは少し分かります」と話しました。
同社の広報担当はJobPicks編集部の取材に対して、「コロナ禍でオンラインセミナーが増えたが、学生が慣れていないこともあり、セミナーは質問しづらい雰囲気になりがちなことが課題でした。
学生の皆さまにより有益な時間にするために、質問しやすい雰囲気にするためのきっかけとして行っていました」と説明しました。
一方で「メンバーの一部が、セミナー内の質疑応答の際に、参加学生として質問を投げかけていたこと、またこうした行為を『サクラ』という表現を用いていたことについては不適切だった」と釈明しました。
同社は5月上旬に担当部署全体に「注意喚起をした」と説明しました。
(取材・文・比嘉太一、中井舞乃:編集・中村信義)