6月から多くの企業で2025年卒を対象にした夏のインターンシップのエントリーが始まります。
24年卒を対象にした調査では学生の9割が「インターンシップに参加した」との調査結果も。今やインターンは“プレ就活”と言われる時代になりました。
インターンを経験した先輩たちは「やみくもに参加するのはダメだ」と口を揃えます。
ではどうすれば? 就活をスムーズに進めるためにも、夏のインターンに備えて心得ておくべき3ポイントを公開します。
6月から多くの企業で2025年卒を対象にした夏のインターンシップのエントリーが始まります。
24年卒を対象にした調査では学生の9割が「インターンシップに参加した」との調査結果も。今やインターンは“プレ就活”と言われる時代になりました。
インターンを経験した先輩たちは「やみくもに参加するのはダメだ」と口を揃えます。
ではどうすれば? 就活をスムーズに進めるためにも、夏のインターンに備えて心得ておくべき3ポイントを公開します。
インターンシップは「就業体験」とも言われ、企業が学生に就業体験を提供する場として広く認知されています。
ここ最近ではインターンシップが多様化しています。
企業から賃金をもらいながら長期的に就業体験ができる「長期インターン」のほか、1〜2週間程度の「短期インターンシップ」、1日だけ参加できる「1day仕事体験」、職種で就業体験できる「ジョブ型インターン」などです。
プログラム内容も企業によってさまざま。
例えば、営業社員に同行してクライアントを訪問するといった実務遂行が含まれているプログラムがあれば、学生同士がグループワークやプロジェクトを組んで新規事業の提案を考え、会社側にプレゼンテーションするプログラムもあります。
株式会社リクルートの研究機関「就職みらい研究所」が24年卒業予定の大学生・大学院生を対象に実施した調査によると、インターンシップなど(1day仕事体験も含む)に参加した学生は93.6%に上ります。
参加時期の割合は、卒業年次前年(学士3年生、修士1年生)の「8月」が63.1%と最も高く、翌月の「9月」が52.1%と次に高い結果で、夏休み期間にインターンに参加した学生が多いことが分かります。
応募したきっかけで最も割合が高かったのは「業種理解を深めたいと考えたから」(78.5%)でしたが、前年の調査から伸びが最も大きかったのは「採用選考に有利に働くと考えたから」でした。インターンと選考とのつながりを強く意識している様子がうかがえます。
また、学生の参加期間は、「1日以下」のプログラムが89.7%と大半を占めました。「2日以上〜5日未満」は8.4%、「5日以上」は1.9%と少数派でした。
インターンシップ・1day仕事体験 参加件数全体におけるプログラム期間の割合
就活の準備期間としてインターン参加を検討している学生が多い今の時期。参加を有意義にするためには、どうすればよいのでしょうか?
広告事業を営むベンチャー企業に内定をもらった大学4年生の藤岡蓮さん(21)は昨年、1day仕事体験や3〜5日間の短期インターンを中心に応募しました。
6〜9月にかけて楽天やニトリ、博報堂、大塚商会、中部電力など約10社に参加したと明かします。
名の通った企業の多くと接点を持った藤岡さんですが、意外にも反省を口にします。
藤岡さん 「今、思えば、かなり後悔しています。あんなにたくさんインターンシップに参加したのに、実務を経験するプログラムがほぼ無かったんです」
「インターンの参加時期が重なったことで、睡眠時間も削ってしまって疲弊しました。正直、無駄な時間を過ごしたとさえ思ってます」
「たくさんあるインターンに応募する前に、ある程度、自分の興味や業界を絞ることをおすすめします」
1年前の自らを振り返って、藤岡さんにはもう一つ、これから就活を迎える人たちへの「助言」があります。
それは、SNSとの向き合い方です。インターン参加のピーク期間である夏を前に、自分と同世代の就活生らによるSNS投稿が活発化するといいます。
藤岡さん 「SNS上ではありとあらゆる就活生が、就活の近況を投稿しています」
『大手企業のインターンに合格した』
『有名企業のインターンに参加できたから、内定へ一歩リード』
こうしたリアルな声にいつも触れて、内心、焦る気持ちが高まったと振り返ります。そこで藤岡さんは、心の不安を埋めるように、インターン先を増やしていったのです。
藤岡さん「当時の自分は、インターンシップになるべくたくさん『参加すること』が目的になっていました」
「知名度の高い会社のインターンに参加できると、同世代から一目置かれたりします。その後の就活中で面接官からも『優秀な学生』と見られる、といった(真偽不明の)情報もありました」
「参加自体を目的とせずに、『業界を知る』『競合他社を比較する』などと、自分なりに選択の狙いや参加の目的をハッキリさせてから参加した方がいいです」
自己分析や職業・業界分析といった準備が浅い状態で、「まずはお試し」と参加することも少なくないインターン。周りの情報に過度に振り回されて、自分を見失わないようにしたいですね。
焦らず、インターンシップに参加する目的も改めて考えてみましょう。
調査では「採用選考に有利に働く」と期待する声が増えていると、紹介しました。ただ、こうして企業との接点を持つことだけが、メリットでしょうか?
春から社会人1年目として広告会社で働く平尾圭市郎さん(24)は、インターンに参加した学生同士のつながりができて、新たに「就活仲間」となったことが、その後の就活にプラスに働いたといいます。
平尾さんは、エンタメや広告業界を中心に、複数の短期のインターンを経験。
グループワークで一緒になった他大学の参加者たちとは、インターンを終えた後も連絡を頻繁に取り合い、互いに励まし合いながら、そこから1年近い就活を乗り越えたと明かします。
平尾さん「夏のインターンシップで得られたのは就活仲間です。就活という同じテーマでつながった仲間だからこそ、就活に絞った何気ない相談ができたり、語り合ったりすることができます」
「同じ大学の友人とはまた違ったメンバーなので、すごく刺激になりますし、仲良くなったコミュニティ内では情報交換したり、悩みを共有したりすることもできます」
「同じ業界で働いている“就活仲間”も多いので、今でも連絡を取り合ってます。インターンの出会いがきっかけで作られたコミュニティが、仕事をするうえでの財産にもなっています」
多くの学生は日頃、同じ大学に通う友人や気の合うサークル仲間など、どうしても居心地の良いコミュニティとだけ関わりがちではないでしょうか。
慣れ親しんだ「コンフォートゾーン」から少し出て、これから就活を「一緒に戦える」仲間と出会える可能性があるのも、インターン参加の隠れた魅力と言えるでしょう。企業や現役社員との接点を探りつつ、ぜひ自分の隣の参加者にも目を向けたり、声をかけたりしてみましょう。
短期であれ長期であれ、インターンに参加した後、どんな自分になっていたいですか?
インターンシップに詳しいリクルートワークス研究所の特任研究員、豊田義博さんは「自己と多種多様な仕事を知るきっかけ」として、次のように解説します。
豊田さん「インターンシップはアメリカをはじめ主要国に広く浸透している仕組みで、仕事に対する自分の軸を定める絶好の機会になります。キャンパスとは異なる場所で、日常とは違う経験をすることで、自分の志向や価値観、動機に気づき、自己発見を深められるでしょう」
就活で必須とされる自己分析につながる一歩。では、インターン先は、どのように選べばいいでしょうか。手当たり次第は得策ではないとして、「ゼロ」や「1社だけ」では心もとない気もします。
豊田さんは、インターンを実施する企業の特徴と実施期間によって、得られる経験に違いがあると指摘します。
そして、「大企業」と「ベンチャー」、「長期」と「短期」など、それぞれの特徴を頭に入れた上で、さまざまなインターンに計画的に参加することを勧めています。
豊田さん「例えば、1カ月以上の長期にわたるインターンであれば、実際の仕事(実務)を任せてもらえたり、社員の仕事を補佐したりするような実践的な機会を得られて、働くことへの責任や実感がわくでしょう」
「長期間のプログラムを実施している企業は少数ですが、一部のベンチャー企業は積極的に機会を提供しています」
「1日で実施されるプログラムは、実施企業が多いので、学生側も多くのプログラムに参加することが可能で、企業の情報をたくさん知ることができます。ただ、企業の説明会や質問会といった内容が主流で、長期参加で期待される就業の経験は得られません」
豊田さん「1週間程度のプログラムは、事業の企画・立案を参加者同士で進めるような体験が組み込まれていることが多く、実施企業そのものや企業が属する業界について理解が深まります」
「こうした特徴を知った上で、似たようなプログラムや一つだけではなく、いくつかのプログラムを組み合わせて参加することが、良質な自己発見につながります」
ここまで、インターンに参加するために知っておくべき「3つの心得」を紹介しました。
最後に、4社の1dayプログラムに参加した桑田倫康さん(23)のアドバイスを紹介します。現在は、社会人2年目で、IT企業のインサイドセールスを担当しています。
桑田さん 「自分のキャリアをより良くするためには、学生時代から仕事を知らなければなりません。また、インターンは自己分析のきっかけになったり、キャリアに対する視野を広げたりすることができる絶好の機会です」
「他業種を知ったり、自分自身のことを知ったり、何でもいいですが、必ず何か目的を持って参加することはとても大切です」
「インターンを経験できるのは学生の特権なので、自分なりの目的意識を忘れずに参加してみてください」
(取材・文:比嘉太一、デザイン:高木菜々子、編集:筒井智子、野上英文)