活躍見込んだ転職先は“ブラック”「次の行き先も、貯金もない」 

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しごと相談BAR

今夜、BARを訪れたのは、東京都内にあるシーシャ(水タバコ)を提供しているBARで働いている29歳のワタルさん(仮名)。

休日に呼び出されることが頻繁にあり、サービス残業も常態化していることに悩んでいるようです。

“しごと相談BAR”、本日も開店です。

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目次

休日なのに呼び出され、無給で勤務

午後8時すぎ。ハットを被り、右手中指に太い指輪をはめたワタルさんがBARを訪れました。

ハイボールの入ったグラスを片手に、ため息をついたワタルさん。

ワタル「休日なのに仕事で呼び出されて出勤することも日常茶飯です」

「その分の給与は発生しないし、サービス残業が当たり前なんです」

「チーン」

ワタルさんが手元のベルを鳴らしました。

しごと相談BAR

店舗運営責任者になりたくて

ワタルさんがシーシャ(水タバコ)BARで正社員として働き始めたのは、ちょうど2年前。前職では楽器を扱う会社で営業担当でした。

ワタル「前の会社は中小企業でしたが営業に専念できる環境で、それなりにやりがいも感じていました。でも店舗を運営する責任者としての仕事にも関心を持っていたんです」

「SNSでシーシャ(水タバコ)BARの店舗運営の求人投稿を見て、責任者として働けることを知りました」

「シーシャBARには趣味でよく行っていましたし、店舗運営で結果を出せば複数店舗を統括できるエリアマネージャーとしても活躍できるチャンスがあったので、転職を決意しました」

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Vershinin / iStock

全額自腹で「店の近くに住め」と引っ越し

ただ、シーシャBARで働き始めてすぐに違和感を抱いたといいます。

ワタル 「入社してすぐ、会社から引っ越しを命じられました。店舗の責任者だからという理由で、店から徒歩圏内に住むように言われたんです。アルバイトスタッフが休んだ場合でもすぐに対応できるためだと説明があって。強制的で、引っ越し費用は全額自腹でした」

休日に店に呼び出されることも常態化しているといいます。

ワタル「今日も休日なのに急に呼び出されました。急ぎの案件でもないのに、ミーティングするから店に来いと言われて。ミーティング後、そのまま働かされました…賃金は出ないし、本当に嫌になります」

「サービス残業も当たり前です。労働時間は休憩入れて9時間なんですが、休憩もできない状況で、12時間労働は当たり前。残業代も出ません」

「先日は店舗オーナーが客の前でスタッフを叱りつけて、職場の雰囲気は最悪です。もう、しんどいです」

「来年30歳になるんですが、自分の今の仕事も含めてキャリアに悩みますよね」

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「ブラック職場を辞めて、キャリアをフラットに」

本日、バーカウンターにアドバイザーとして立つのは、しごと相談BARの店主代理の加藤航介さん。飲食店経営の経験があり、夜はバーテンダーとして店に立ち、昼はコンサルティング業に従事しています。

加藤「働いている場所は典型的なブラック職場だから、今すぐ辞めるべきだと思う。このままだと無駄な時間を過ごすことになる」

「ちなみに貯金はあるの?」

ワタル「あまり無いです」

加藤 「実家は近くなの?」

ワタル「都内から近いです」

加藤「それなら実家に戻って、バイトでもいいから働きながら仕事を探す方がいい。今の職場環境は本当によくない。一度辞めて、キャリアをフラットにしてから転職活動をした方がいい」

「次の職場が決まらなければ辞めちゃいけないなんてルールはないよ。今の辛い状況を打破するために、まず辞めること。それが最初の目標」

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「これから先、まだ30年以上働くのだから」

加藤「ざっくりでもいいけど、次はどんな仕事がしたいの?」

ワタル「実は前職の楽器屋から、『ベテラン社員が抜けちゃったから戻ってきてくれないか』と打診されています」

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加藤「だったら前職の楽器屋に戻って、働きながらキャリアを考えるのがいいと思う」

「これから先、まだ30年以上働くのだから、じっくり考えよう。やりがいと給与、プライベート充実の3つの軸で考えるといいよ」

「今からでも自分が求めるキャリアを模索して、追求したらいいと思う。まだ若いから大丈夫。もし、また立ち止まったら、このカウンターにおいで。いつでも話を聞くから」

ワタル「アドバイスが腑に落ちて、光が見えました。ここに来なければ、辞めるという選択肢にも気づけなかったと思います。ありがとうございました」

日々の忙しさでキャリアを考える暇もなかったワタルさん。心のゆとりが生まれたようです。

   ◇

働く若者たちの本音が聞こえてくる「しごと相談BAR」。連載シリーズは隔週で金曜に公開予定。

(取材・文:比嘉太一、撮影:飛塚倫久、デザイン:高木菜々子、編集:筒井智子)

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