就活前にインターンシップをする大学生が増えましたが、そこから内定につながる人ばかりではありません。春に卒業した岩澤玲衣さんは、ITベンチャー企業での長期インターン経験が、職種や業界選びに限っていえば、プラスだけでなくマイナスにも働いたといいます。
「これから就活本番」という3年生の年末に自分を見失ってしまった岩澤さん。本命の大手人材会社に内定したカギは、「自己分析のやり直し」にあったといいます。就活スケジュールを振り返ってみましょう。
就活前にインターンシップをする大学生が増えましたが、そこから内定につながる人ばかりではありません。春に卒業した岩澤玲衣さんは、ITベンチャー企業での長期インターン経験が、職種や業界選びに限っていえば、プラスだけでなくマイナスにも働いたといいます。
「これから就活本番」という3年生の年末に自分を見失ってしまった岩澤さん。本命の大手人材会社に内定したカギは、「自己分析のやり直し」にあったといいます。就活スケジュールを振り返ってみましょう。
── いつ頃から、どのように就活を始めましたか?
岩澤 周りの就活生と同じように3年生の5〜6月から始めたのですが、正直あまりやる気が出なくて……(笑)。人それぞれキャリアについて考えるベストなタイミングがあるはずなのに、一斉に就活をしなきゃいけなくて、焦らされているような感覚がありました。
学外の活動など他にやりたいこともいろいろあったので、インターンやその他の活動に力を入れた方が自分にとって良いだろうと考えたんです。なので3年生の12月までは企業説明会に参加する程度にとどめました。
いま思えば、あの頃は「ゆる就活期」だったと思います。
── 行きたい業界や企業も決めていなかったのですか?
岩澤 最初はすごくざっくりしていました。「ITベンチャー」という広いくくりで見ていて、どんなプロダクトを扱っているか、なんの事業をやっているのかといった具体的な企業研究までできていませんでした。
最初は広く見始めて、徐々に志望業界を絞っていった感じです。
── ITベンチャーがいいと思った理由は?
岩澤 長期インターンシップで、ITベンチャーの事業開発に関わったのがきっかけです。インターンで入ったのが、事業部の中でも新規事業に取り組んでいるチームで。
サービス内容も顧客への提案内容も、分刻みで変わっていくようなスピード感でした。新規事業なので、人数も5人くらいと少なかったんですよね。
すごいスピード感の中で仕事を進めて、1日のうちにプロジェクトがどんどんアップデートされていくのが楽しかった。インターン生なのに大きな裁量権をもらえたのも魅力的でした。こういう仕事の進め方が、私には合っているとも思ったんです。
── 最終的に大手人材会社に内定したとのことですが、いつ頃に方向転換したんですか?
岩澤 3年生の12月頃です。モチベーションが上がらないまま、「ゆる就活期」を続けているうちに、自分が何をしたいのかとうとう分からなくなってしまったんです。
── それは何がきっかけだったのでしょう。
岩澤 ITベンチャーの合同説明会などに参加したとき、「成長したいのは分かったけど、あなたは何がしたいの?」と聞かれることが多くて。
その質問に、はっきりと答えられなかったんです。「うーん、何がしたいんだっけ……」といつも答えに詰まってしまって。
そのモヤモヤにちゃんと向き合ってみた結果、ITベンチャーがいいなと思ったのは、「成長できそう」「スピーディに働けそう」という環境面での理由が大きかったからだ、と分かってきました。
どんな仕事をしたくて、どんなキャリアを重ねていきたいのかまで、考えきれていなかったんですね。次第に「どうすればこの企業に内定をもらえるのか?」という視点になってしまって、自分が何をしたいのか分からなくなり、疲れてしまったんです。
── 半年以上就活を続けてきて燃え尽きてしまったのですね。どうやって立て直したんですか?
岩澤 自己分析を一からやり直しました。具体的にやったのは、自分が何に熱量を持ち、心動かされてきたのかを整理し、年齢ごとにプロットする「自分史づくり」です。その結果、私は「人に情報や出会いを提供して、意思決定のサポートをすること」をやりたいんだと気づきました。
3年生の12月は「自分史づくり」に充て、年明け1月からは人材業界、広告業界に絞ることにしました。そのタイミングで、ITベンチャーを新たに受けるのはやめました。
── ご自身の就活を振り返って、どう思いますか?
岩澤 自己分析がしっかりできていない段階で、そこまで興味がない企業の説明会や面接には行かない方がよかったなと思います。それよりもまずは大学生活を楽しむ方が大切ではないでしょうか。最近、1年生のサークル選びや、インターン先選びも、「ガクチカづくり」が目的になっている人が多いような気がしています。就活中はいろんな情報があふれていて焦りますが、就活を始めるタイミングも、やる気やキャリアに対する考え方も人それぞれです。
振り返ってみれば、もっと「今の自分が何に心が惹かれるのか」に素直になって行動すれば良かったと思います。私はだいぶ遠回りしてしまったけれど、最終的には自分の素直な思いに気づけて、その思いを叶えられる会社に内定をいただけました。後輩には「自分としっかり向き合った後でも、就活は遅くないよ」って伝えたいですね。
(取材・文:種石光、デザイン:高木菜々子、編集:石川香苗子、筒井智子)