コンサルなじめず転々。“寄り道キャリア”は転職でマイナスに？

友人とBARを訪ねたのは、東京都内に住む32歳のカズヤさん（仮名）。欧米の外資系食品メーカーに勤めていたのですが、2月ごろに突然、解雇されました。

「国際情勢のあおりを受けて事業が縮小されて、日本からの撤退が決まってしまって…。転職しようと考えていた矢先の解雇でした」

現在、転職活動中のカズヤさん。登録した転職サイトを通じてコンサルの企業から「1次面接を受けないか」と打診されていますが、コンサル業にトラウマがあるといいます。

“しごと相談BAR”、今夜も開店です。

カズヤさんは4年前に地方から、都内にある環境系のコンサル会社に転職しました。

転職した直後にコロナ禍で、リモートワークで職場環境になじめなかったといいます。

「当時は家にこもりっぱなしでした。1人で仕事をしている状態で、コンサルという仕事にも慣れなくて…」

職場の人間関係に疲れてしまったこともあって、2年前に外資系食品メーカーに転職しました。ただ、1カ月前に日本事業の撤退で、会社から解雇を告げられました。

「転職サイトを通じて、総合コンサルから1次面接を受けないかと打診がありました。正直、コンサルで上手くいかなかったので不安もあって、戻るかどうか迷っています」

「チーン」

カズヤさんが手元のベルを鳴らしました

BARでアドバイザーとしてカウンター席に座るのは、これまで複数の企業で人事責任者やキャリアアドバイザーなどを務めている高橋実さんです。

高橋「カズヤさんは前職のコンサルは、何がいいなと感じたの？」

カズヤ「環境分野がもともと大好きで、携われる仕事だったので2社目として環境系コンサルの仕事に就きました」

高橋「コンサルがメインではなくて、環境に関わりたいと思って入ったんですね」

カズヤ「そうですね。環境分野のコンサルだったので、やっていること自体は楽しかったです。ただ、職場やコンサル業の仕事は、ちょっと違うかなぁーと感じて、2年ほど前に外資系の食品メーカーに移りました」

高橋「シンプルに言えば、もう結論出ているので、コンサルに戻る必要はないですよね。またコンサルに戻ったら同じ違和感を覚えてしまうかも」

カズヤ「コンサルは合わなかったので、キャリアの失敗だと思っています」

高橋「キャリアは失敗したとか成功したとかはないと思いますよ。いろんなタイミングがあり、流れもあります。変えられないことだってあります」

「働いていた外資系の会社が日本から撤退して、解雇された話も、しょうがないですよね。良いことも悪いことも含めて、その経験値や自分が感じたことをどう生かすかが大事だと思います」

「環境コンサルに入って、携わりたいのはコンサルではなく、『環境』っていう業界だと気づいた。そのキーワードは実際に仕事をやってみないと気づけなかった。だから、失敗じゃないよね。

「コンサルの軸ではなく、環境という軸が合っているような感じもしますが、いま悩んでますよね。だったら悩み抜いたらいいじゃないですか」

高橋「今、選考はどんな状況ですか」

カズヤ「総合コンサルから1次面接を受けないかと打診されていて、とりあえず受けてみて、年齢が近い人も多いのか分からないですし、組織の空気感とか社風などを知ってみようかと思います。1次面接なので、そこでダメかもしれないですし…」

高橋「迎合する必要はまったくないですよ。むしろ、仕事を選ぶ権利がこっちにはありますからね」

カズヤ「練習で受けてみようかなぁーと」

高橋「いやいや、真剣に受けた方がいいですよ。そんな練習はいらない」

「練習だと自分のやりたいことの本音を言わずに隠してしまう。面接で自分の本音を言わないで、なんとなく上手に話して、内定をもらった。結果、働いて失敗しましたってなったら、お互いに良くないですからね」

「自分自身で『環境』っていうキーワードを分かっている。面接で言って、『うちは全然ウェルカムだよ』って言ってくれる会社があるかもしれない。自分が納得するためにも、本気で受けた方がいいですよ」

カズヤ「そうですね。面接官に本音で伝えないと、入社後になって『違う』ってなったら不幸になりますね」

カズヤ「環境コンサルを辞めて、外資系の食品メーカーに入ったのが後ろ向きな転職だったので、自分に自信が持てないところもあります」

高橋「そう思うのは自分だけですよ。企業が欲しい人材はナンバーワンかオンリーワンです。ナンバーワンは1人しかなれないので、超絶、難しいんですよ。一方で、オンリーワンは特殊だったらなれます。『自分でキャリアが特殊です』って言うのもいい」

「地方から来て、環境系コンサルに行って、外資系の食品メーカーで働いて会社都合で解雇になった。そのキャリアだけで、オンリーワン。希少価値は高いですよ。それだけ苦労してきたわけで、めちゃくちゃ気合いを入れて仕事してきたからこそ、胸を張って転職活動をしたらいいと思います」

カズヤ「そうですね。背中を押してくれた感じがします。ありがとうございました。自分のキャリアに自信が持てたので転職活動、頑張りたいと思います」

自らのキャリアについて、マイナス思考から脱することができたようです。

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働く若者たちの本音が聞こえてくる「しごと相談BAR」。連載シリーズは金曜に公開予定。

（取材・文：比嘉太一、撮影：飛塚倫久、デザイン：高木菜々子、編集：野上英文）