大学を卒業したら正社員に――。そんなよくある進路をあえて選ばず、社会人1年目からフリーランスとして働く20代がいます。
新卒1年目から独立してライターやインサイドセールスの仕事をする山本名菜さん(25)。入社から2カ月でスパッと辞表を出したのは、人事が発表した「配属ガチャ」が引き金でした。
「こなせる量だけ仕事を受ける」スタイルは、学生時代のインターンでの苦い経験から。いまは、最優先のパートナーとの時間も充実しているそうです。
大学を卒業したら正社員に――。そんなよくある進路をあえて選ばず、社会人1年目からフリーランスとして働く20代がいます。
新卒1年目から独立してライターやインサイドセールスの仕事をする山本名菜さん(25)。入社から2カ月でスパッと辞表を出したのは、人事が発表した「配属ガチャ」が引き金でした。
「こなせる量だけ仕事を受ける」スタイルは、学生時代のインターンでの苦い経験から。いまは、最優先のパートナーとの時間も充実しているそうです。
――現在の仕事内容や働く時間について教えてください。
山本:インサイドセールスやライティングの案件を、計3社から定期的に受けています。平日5日間、1日4~6時間を仕事にあてており、職場は主に東京の自宅です。
ただ、パソコンさえあればどこでも仕事ができるので、たまに帰省する関西の実家や旅行先で仕事をすることも多いですね。
土日は、知り合いの居酒屋のホールを手伝うこともあります。
人手が足りない時だけ「手伝ってほしい」と言われて。私も気分転換になるので「いいよ!」という感じで(笑)。
――大学時代にインターンを経験されていますね。
山本:大学3年の時に休学して上京し、10カ月ほど、スタートアップでインターンしました。その時すでに、いわゆる総合職としての働き方は、自分に合っていないと感じていました。
あらゆる業務が不定期的にどんどん降ってくると、パニックになって、ミスや失敗が本当に多かったのです。自分が招待したオンライン会議で、ホストだから会議を始めないといけないのに、気づかなくて画面の前で開始をずっと待っている…とか(苦笑)。
そんな笑えるミスだけではなくて、タスクがたまりすぎて、大事な業務を放置してしまっているのを後になって気づいて焦ったこともありました。
そうしたことが重なっていたので、インターン先の会社や社長のことは好きでしたが、「このままここに就職しても、貢献できないな」と悟ったんです。
――それでも大学を出た後、就職したのはなぜですか?
山本:独立するためのスキルを身につけたかったからです。
インターンでの経験から、「総合的に多種多様な業務」ではなく、「特定の領域に特化した仕事」の方が自分に合っているのではないか、と考えるようになりました。
具体的には当時、デジタルマーケティングに関連する仕事をしていたことや、インターン先の社長にライティングスキルをほめてもらったことから、「広告運用」と「SEOライティング」の掛け合わせで、独立を目指そうと決めました。
そのために、デジタルマーケティングの会社に就職して、広告運用の経験が積める部署を希望しました。ただ、それが大きな誤算だったことを入社2カ月後に思い知ることになります……。
――何があったのでしょう?
山本:配属希望が叶わなかったんです。
人事面接では「広告運用またはそれに関する部署に配属されなければ辞めます」とまで伝えていたのですが……。なんとなく、他の部署で働く可能性をほのめかされることもあって、配属先が決まるまでは安心できない日々でした。
2カ月間の研修を終えて、配属先の発表式がありました。式の会場には、役員クラスの大御所がズラリ。1人ずつステージに呼ばれ、大きなスクリーンで配属先が発表されました。
いよいよ私の番。ドキドキしながらステージに上がりました。……私の配属先は、希望部署とはまったく異なる部署でした。
「えっ…全然、めでたくないんだけど」
一瞬で青ざめました。それでもまわりは大拍手しているという状況でした。とにかくその場をどう乗り切ろうかと、もう必死でしたね。
自分の中では、希望する部署で広告運用の経験を積んで独立する、というキャリアパスを描いていたのに、それができないなら…と。その日にスパッと退職を申し出ました。迷いはありませんでした。
配属ガチャ:新入社員がどの部署に配属されるかわからない不安な心境を表したことば。おもちゃ売り場やスマホのソーシャルゲームの「ガチャ」になぞらえており、特に内定式や新人研修後の時期にネットで話題となっている。
――「配属ガチャ」で退職後、すぐフリーランスに?
山本:はい。学生時代のインターン先の社長から、「戻ってくる?」と温かいお言葉もいただいたのですが、インターン時代の苦い経験を繰り返してはいけないと思って、フリーランスとして走りながらスキルを身につけていこうと決めました。
その社長は、フリーランスとして駆け出したばかりの私に仕事も紹介してくれました。本当にヒーローみたいな存在で、いつも支えてもらっていて、本当にありがたいと思っています。
――新卒1年目にフリーランス。失敗や困ったことはありますか?
山本:「肩書きがなくなってしまった」という不安はありました。
独立するなら少しでも目立つような肩書きを持たなければ…と思って、苦し紛れにTwitterのアカウントに付けたのが「新卒1年目フリーランス」です。もう2年目になってしまうので、また考えないと(笑)。
ただ、思い当たるミスや失敗は、実はないんです。
インターン時代はあんなにミスや失敗だらけだったのに、フリーランスとして仕事を始めてからは、そういったことが起こりません。
――ミスがなくなった理由を自分なりにどうみていますか?
山本:特定の領域の業務に集中できているから、という理由もあるかもしれませんが、一番大きな要因は、自分がこなせる量しか仕事を受注していないことだと思います。
タスクがあふれるとキャパオーバーになってしまって、自分が苦しくなるだけでなく、先方にも迷惑をかけてしまいます。それがわかっているので、独立当初から、仕事量は少しずつ少しずつ慎重に増やしています。
「今月はちょっと多く入れてしまったな」と感じたら、翌月に調整して無理のない量に戻す、というような感じです。
――仕事量の調整は1カ月スパンなのですね。
山本:はい。もともと、急な案件が入ったときにも対応できるように、1日8時間フルで働かなければ終わらない仕事は、受けないようにしています。
さらに、受注した仕事について、1カ月あたりの工数をスプレッドシートで計算して、だいたい月80時間~100時間に収まる業務量にしています。
――計算上は平日1日4時間〜5時間。正社員と大きな差です。
山本:総合職の仕事って、あふれるほどの仕事があるので、その中で「どれを優先すべきか」を常に考えなければならないですよね。私の場合はそれが苦手なので、最初から「絶対にこなせる」と思う量しか受けないようにしているんです。
そういう意味では、新卒1年目に経験するような“成長痛”を、大学3年生の時のインターンで感じられたことは、私にとって大きなプラスだったのかもしれません。自分の苦手を知ったうえで「じゃあどうすれば自分が最もパフォーマンスを発揮できるのか」を考えて、いま実践できているので。
――大卒初任給の平均は21万200円というデータがありますが、最低これぐらいは欲しいという収入額はありますか?
山本:そうですね、21万円だとちょっと厳しいかなと思います。パートナーと2人暮らしですが、都内ですし。ミニマム25万円…余裕持つなら手取り30万円ぐらいは必要かな、と思っています。
――「稼ぎたいから、もっと仕事を受けたい!」といった気持ちもありますか?
山本:たしかに、ありますね。でも、そうするとパンクしてしまうので、量を増やして金額を上げることは、しないようにぐっとこらえています(笑)。
もともとプライベートを最優先で生きていきたい気持ちが強いので、仕事量を増やして収入が増えても、私の場合は満たされないと思うんですよね。
――今後のキャリア目標は何でしょうか?
山本:実は、とりたててキャリアの目標はないんです。「プライベートを重視して生きていきたい」という気持ちが強いので、今後は子どもが欲しいし、子育てがしたいです。
「このような仕事に挑戦して、こういった実績を残したい!」と大志を抱いている人を見ると、うらやましい気持ちになることもありますけどね。
ただ私は、一緒に暮らしているパートナーとゆっくり過ごす時間や、旅行先でお互い日中はリモートワークをして「夕方からご飯を食べに行こう!」といった過ごし方が、すごく好きです。
だから、仕事で特に「これに挑戦したい」「これを成し遂げたい」と思うことはないですし、今の生活がベストだと言い切れるくらい充実しているので、この生活を守っていきたいなと思っています。
一方、飽き性ではあるので、小さなことでも新しいことに踏み込んでみることは意識しています。例えばライティングであれば、仕事を受託して執筆するだけではなくて、ディレクションといった異なった立場で関わってみるといったことです。
――ワークスタイルを崩さない程度に、新しい挑戦もしているんですね。
山本:はい。就活の時に真剣に自己分析したことや、インターンとしていち早く社会人経験を積んだことが生きています。
「自分は何を大切にしたいのか」「どういうことがパワーの源なのか」「何が苦手でストレスになるのか」。こうしたことが、自分の中で明確だから、今の働き方に迷いがないのだと思います。
仕事の中で、最も楽しいと感じる瞬間はどんな時ですか?
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文章を書くためには、対象物について知り、しっかりと理解しなければなりません。理解なしでは、自分の言葉で説明できないからです。そのため、さまざまな分野の記事執筆を引き受ければ引き受けた分だけ、新しい業界の知識に触れることができいますし、業界の方とも知り合うことになります。
これまで、記事執筆のお仕事を通して今までは出会うことがなかっ...
たような業界の知識や人に出会うことができました。これらの経験は、必ず私の今後の人生の財産になると思っています。 私自身、好奇心旺盛な性格だからこそ楽しむことができているのかもしれませんが、記事を書くお仕事はとてもワクワクします。
(取材・文:coco、デザイン:高木菜々子、編集:野上英文)
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