「就活で少しでも好印象に」。そう願う男子学生たちの“お助けツール”として注目されているのが、メンズメイクです。美意識が若い世代で高まるなか、メーカーの後押しもあって市場は広がりを見せています。「気にはなるけど、何から手をつけて良いかわからない」というメンズ向けには、はじめの一歩として「マストアイテム3つ」を紹介。就活メイク事情の今を公開します。
「就活で少しでも好印象に」。そう願う男子学生たちの“お助けツール”として注目されているのが、メンズメイクです。美意識が若い世代で高まるなか、メーカーの後押しもあって市場は広がりを見せています。「気にはなるけど、何から手をつけて良いかわからない」というメンズ向けには、はじめの一歩として「マストアイテム3つ」を紹介。就活メイク事情の今を公開します。
「面接の印象はメイクでグッと上げられるぞ」「(肌に)サッとひと塗り」「眉をシュッと整える」
男性化粧品ブランド「uno」シリーズのテレビCM。俳優の窪田正孝さんが、リクルートスーツ姿の男子学生に就活メイクの仕方を伝授する一幕があります。
unoを展開する化粧品メーカー「ファイントゥデイ」は、肌のトーンを調整するBBクリームを発売した翌年の2020年から、男性向けのCM制作や動画制作に力を入れてきました。
動画コンテンツは就活支援団体やユーチューバーとタイアップして企画・配信。商品の紹介だけではなく、実際にどのような場面で活用するのかを解説する内容を充実させてきたといいます。
2023年3月には、東京大学の男子就活生向けに「就活メイクレッスン」を、オンライン開催しました。
レッスンは、設立されたばかりの東大の美容サークル「BUT PROJECT」とのコラボでした。
「東大男子は勉強のイメージが強く、美容意識に挑戦しにくい風潮を感じていました」と、サークル代表の阪上新さん。東大男子111人へのアンケート調査では、美容やメイクが気になる一方、「友達でやっている人がいない」「機会がない」「やり方が分からない」という声が多く、unoと初めて開催しました。
参加者全員からポジティブな感想が残されたといいます。
「メイクへの抵抗感がなくなった」
「美容へのハードルが高くならずに楽しく参加できた」
「大学3年の就活が始まりだすこの時期に、良い企画」
こうした男子学生向けの就活メイク講座を、大学や専門学校が主催することもあります。
東京都内の専門学校「神田外語学院」では2021年から毎年、大手化粧品会社の社員が学生にBBクリームの塗り方や眉を描くアイブロウの仕方を実践形式で教えています。
学校の担当者は「面接では第一印象が大事だと言われているので、女子学生だけではなく、男子学生もメイクで自信をつけてもらえればと考えています。学生たちからも好評です」
「今、男性がメイクすることへのハードルが下がっています」
ファイントゥデイ日本事業本部でブランドマーケティング部の徳田滉大さん(32)は、手応えを口にします。
業界内で男性向けの「uno」をいち早く立ち上げたファイントゥデイ。これまで、化粧水や乳液などのスキンケア商品に加えて、コロナ禍に入る直前の2019年頃からBBクリーム(フェイスカラークリエイター)やアイブロウといった男性用のメイクの新商品を次々に発売してきました。
男性用メイクの売り上げは伸び、特にBBクリームを購入するのは10代と20代の若者たちが大半を占めるといいます。
若い男性たちがメイクをするようになった背景には、韓流ブームや美意識の高まりがあると指摘します。
「2019年以前に日本以外のアジアで男性がメイクをする文化が生まれ始めていましたが、日本では浸透していませんでした。日本人男性が化粧をすることに抵抗がありました」
ただ、2019年以降、若者を中心に韓流ブームが巻き起こり、韓流の男性アイドルのようにBBクリームを塗ったり、アイブロウをしたりすることに抵抗がなくなってきたといいます。
マーケット調査会社「インテージ」によると、男性化粧品の市場規模は2022年に425億円に上り、5年前と比べて約1.3倍に拡大しました。
このうち男性用のファンデーションやアイブロウ、リップなどの「メイクアップ商品」は17億円と、まだ規模は小さいですが、同じ5年間で2倍以上に伸びています。
男性の身だしなみに対する美意識は年々、高まる傾向に。なかでも若い人たちにとって、スキンケアをすることは当たり前になり、スキンケアからより一段上のケアをするとなったとき、メイクのアイテムが選ばれているといいます。
「スキンケアだけでは、ニキビやシミ、そばかす、目のクマといった肌の悩みをすぐには改善できません。ただ、BBクリームを塗ったり、アイブロウをしたりすることで自分自身の外見上のコンプレックスを解消することは、自信にもつながります」と徳田さんは話します。
気になるメンズメイク。敷居の高さを感じている男性は多いです。
徳田さんは初心者でも3つのアイテムがあれば、簡単にメイクができると説明します。
まず、BBクリームを塗ります。塗ることで肌の色がよくなり、ニキビや目のクマ、ヒゲの青みなどを隠すことができます。
次に眉を描きましょう。表情が豊かになり、印象がよくなります。
最後にリップクリームで唇を発色させるとより、爽やかになります。
ところで、男性が就活でメイクをする意味ってどこまであるのでしょうか?
徳田さんは、コロナ禍で授業がオンライン化されたり、リアルな場での活動が制限されたりと、いまの就活生は、これまで以上に不安を抱えたまま活動をしているのではないかと感じています。
そんななか、メイクは就活だけでなく、仕事をする上でも「必須のアイテム」だと力を込めます。
メイクをすることで堂々と振る舞えたり、自信を持って仕事ができたりするといった効果が男性でも期待できるためだといいます。
「ちょうど10年前に就活していたのですが、当時、今のようなメンズメイクはまだ浸透していませんでした。当時、自分に自信のない状態で面接を受けていたので、もしメイクをしていたら、堂々とした姿で就活を進められたかもしれません」
「メイクには不思議なパワーがあります。好印象になり、少しでも自信を持って面接に臨んでもらいたいです。男子メイク商品を通じて、就活生をサポートしたい、フォローしたいと思っています」
(取材・文:比嘉太一、撮影:佐々木龍、デザイン:高木菜々子、編集:野上英文)