「SE辞めて、DJ業界に入ります」
今夜、BARを訪れたのは、システムエンジニアとして会社勤めのマツトさん。29歳です。
会社を近く退職し、仲の良い先輩が立ち上げた音楽イベント会社に転職することが決まっています。そこでDJやイベント企画に携わる予定だそうですが、不安があるようです。
しごと相談BAR、開店です。
今夜、BARを訪れたのは、システムエンジニアとして会社勤めのマツトさん。29歳です。
会社を近く退職し、仲の良い先輩が立ち上げた音楽イベント会社に転職することが決まっています。そこでDJやイベント企画に携わる予定だそうですが、不安があるようです。
しごと相談BAR、開店です。
午後9時すぎの店内。カウンターには20代〜30代の若者たち7人ほどが座っていました。みなグラスを傾けながら、自分のキャリアや転職、人生、恋愛といった話題を交わして楽しんでいます。
その中に友人と一緒にカウンターに座り、グラスを傾けているマツトさんの姿がありました。
「仲の良かった先輩から、『一緒にDJイベントの企画をやらない』って誘われて。今は副業としてDJもやってるんだけど....」
「チーン」
マツトさんが手元のベルを鳴らしました。
マツト「DJをしながら、イベント企画などに携わる仕事に転職するんです」
「ただ、エンジニアとしてこれまで4年間、培ってきたスキルを手放すことに引っ掛かるんですよね」
「転職先は先輩が立ち上げた会社なので、ぶっちゃけ衰退する可能性もあるし。そうなった場合、次の行き先はどうなるのかっていう......」
「エンジニアからDJ業界に転身したモデルケースも聞いたことがなくて、先が見えなくて不安なんですよ」
カウンター越しに会話のお相手をするのは、キャリアアドバイザーの井上真里さん。
井上「やりたいことをやるのと、お金をたくさん稼ぎたい考え方と価値観は人によって違いますよね。お金にはこだわらず、やりたいことを仕事にしている人も社会にはいます。マツトさんは、どちらですか?」
マツト「どちらの価値観かと言われれば、お金をたくさん稼ぎたい方だと思います。それだとSEになるけど、今しかできないと思って、次の転職先は『やりたいことベース』で選択しました」
「ただ、またエンジニアに戻りたいと思った時に、ブランクができるので、戻れるのかって心配になっているんですよね」
井上「最近、自分の得意分野をPRして副業の仕事を気軽に得ることができる『スキルマーケット』があります。それを活用するのが良いと思います」
「私の知り合いでシステムエンジニアをしている人がいるのですけど、Slackのbotやスプレットシートの設定を副業として3万円でやっていました」
「マツトさんは、エンジニアとしてのスキルが錆びつかないようにするために、プログラミングスキルを副業で維持しながら、今はやりたい仕事に挑戦するのが良いかと思います」
スキルマーケット:個々人でサービスを売買するウェブサイトなど。ウェブページやデザイン作成、プログラミング、翻訳、アドバイスなど個人のスキルや経験、知識を生かしたさまざまなサービスが出品されている。
マツト「アドバイスありがとうございます。まだ若いんで、どうしてもDJをやりたい方が上回っちゃいます」
「成功すれば、DJをやりながらイベント企画の会社にずっと勤めますが、そうでなければ5年くらいで、って考えています」
井上「それを、もう1つのアドバイスとして言おうとしていました」
「期間とお金を決めることが大事です。フリーランスの方にもよくアドバイスするのですが、たとえば3年や5年と期間を決めて自分の好きなことに挑戦するのです。それから自分の貯金がどのくらいまで減ったら、元のエンジニア職に戻るとか。期間とお金、資金を決めた方が、集中してチャレンジできると思います」
「挑戦して成功したら、続ければ良い。もし納得のいかない結果になったとしても、ここまで頑張ろうと期間とお金を区切って挑戦したことは、自分の糧に必ずなりますよ」
マツト「DJをしながら、副業でエンジニアとしてのスキルを維持しつつ。これから頑張りたいと思います」
「やっぱり時間とお金のことを考えておくことも大事だと分かりました。人生は一度っきりなので、今しかできないことをやります」
本業と副業の入れ替えに悩んでいたマツトさん、もやもやが少し晴れたようです。
◇
働く若者たちの本音が聞こえてくる「しごと相談BAR」。連載は金曜に公開予定。
取材・文:比嘉太一、撮影:飛塚倫久、デザイン:高木菜々子、編集:野上英文