就職活動で話題の「ガクチカ」(学生時代に力を入れたこと)。コロナ禍で目立ったエピソードがなく、「話をどこまで盛っていいのか」と悩む人もいます。
「ガクチカの沼にハマってはいけない」
採用に10年以上携わってきた“面接のプロ”は、こう説きます。具体的な5つの面接対策法と、「面接官はガクチカでは何をみているのか?」をインタビューしました。
就職活動で話題の「ガクチカ」(学生時代に力を入れたこと)。コロナ禍で目立ったエピソードがなく、「話をどこまで盛っていいのか」と悩む人もいます。
「ガクチカの沼にハマってはいけない」
採用に10年以上携わってきた“面接のプロ”は、こう説きます。具体的な5つの面接対策法と、「面接官はガクチカでは何をみているのか?」をインタビューしました。
ガクチカの前に、就活生が必ずやっている「自己分析」。Tipsを聞きました。
大神田さんは、面接でも自己分析は「やはり必要」と話します。
大神田「人生の過去から現在の出来事を掘り下げ、中学校、高校、大学と何をやって、何を感じたのかを棚卸ししていくこと。これは多くの学生がやっている自己分析だと思います。ただ、それにプラスしてやって欲しいことがあります。『ジョハリの窓』です」
ジョハリの窓とは、自己分析をしながら、他者との関係を知ってコミュニケーションを模索する心理学のモデルです。
自分と他人が認識している「開放の窓」、自分は認識しておらず他人が認識している「盲点の窓」、自分は認識していて他人は知らない「秘密の窓」、自分も他人も認識していない「未知の窓」の4領域から構成されています。
大神田さんはその4つの領域のうち、「盲点の窓」を知ることが、面接対策のポイントだといいます。
大神田「盲点の窓を知れば、自分の人生で大切にしたい価値観だとか、他人からどう認識されているのかがわかります。これで自己分析が深まります」
「自分がどういう人間なのか」を聞くことは、日常会話では、あまりやらないことです。少し照れくさいかもしれませんが、勇気を出して、両親や兄弟、友人、恋人、バイト先の仲間などにたずねると良いでしょう。
自己分析のなかで、次に大切なのは、自分の価値観を知っておくことです。
就職後、すぐにミスマッチが起こるのは、自分にも企業にも不幸なこと。
価値観を知る方法として、社会人とたくさん会って話をすることがポイントです。
例えば、OB・OG訪問や合同企業説明会などで、社会人と話をする機会を自ら多く作りましょう。
大神田「30分ほど話をしてみて、こんな社会人になりたい、ぶっちゃけなりたくない、という感想を持つことも、自分を知る手がかりになります」
ただ、感想を持つだけで終わってはダメ。なぜ、その時に『なりたい』と思ったのか、『なりたくない』と思ったのかもセットで考えましょう。
大神田「繰り返すことで、プラスの感情とマイナスの感情を区別できるようになり、自己分析が深まります」
合同説明会は、いろいろな社会人と会話ができる場所。それをフルに活用して自己分析を深めてみてください。
ここからは、自己分析に並んで大切な「企業研究」のポイントです。
「企業のホームページを見ていれば十分」。そう甘く考えていませんか?
ポイントは、企業活動を時間軸で見て、「今」ではなく、「過去」と「未来」を見ること。
大神田「どんな企業でも、世の中に誕生した理由が絶対あります。創業した理由や、いま存在している理由を知ることが、めちゃくちゃ大事です」
今だけでなく「過去」をひも解くことで、創業時の精神や企業理念を深く知ることができます。採用ホームページだけで済ませている企業研究よりも、一歩前進できます。
次に、企業の「未来」を知るツールとして、株主向けに公開している企業の「IR情報」を勧めます。
「会社が、どこに向かってビジネスをしているのかって、めちゃくちゃ大事。例えば皆さんが入社する2024年からプラス10年後です。志望している企業が、どの方向性で、誰をターゲットにビジネスを展開していくのか。その戦略がIR情報に書かれているので、分析しましょう」
約10年間にわたって採用担当をしてきた大神田さんは、最も重要なのは就活生が「オンリーワン」として面接官の目に映るかどうかとだと強調します。
大神田「採用面接が4〜5回あると、倍率は50倍ぐらいになります。面接会場に約100人がいて、その中から2人しか受からないと思ったら、ナンバーワンにならなければならないと考える学生が多くいるでしょう。でも、違います。オンリーワンが、内定をもらう近道です」
では、オンリーワンになるために注意すべきことは、なんでしょうか?
誰もが言いそうな、耳障りのよいフレーズです。
SNS上でよく発信されている「面接官をうならせる一言」や、就活本に書かれている「面接問答集の答え」。これらをなぞるだけでは、大神田さんは、オンリーワンにはなれないと指摘します。
「マニュアル本のように答える必要はなくて、ありのままの自分を出せばいい。正直、正解の答えはありません。自分という存在をどれだけ面接官に知ってもらえるかが、成功の鍵を握ります」
大神田さんによると、面接を通過できない学生の多くは、「面接官がその学生はどんな人なのかを判断できなかったケースが大半だ」と言います。学生側が答えた内容そのものが、「落とされる理由」ではないのです。
「自分という人間をとにかく短い面接時間で理解してもらう。そこがすごく大事です」
面接では、「自分をよく見せたい」と意気込む学生が、ガクチカを必死に伝えようしがちです。
大神田「ガクチカをどうしても喋りたい、という気持ちにとらわれていませんか?」
「ガクチカを伝えたい気持ちが強すぎると、面接官の質問に率直に答えられないという沼にハマってしまいます。面接官の質問には、何よりストレートに、端的に答えることが大事です」
例えば、ガクチカでよくある間違った例として、「困難だったこと」を質問したのに、逆に「達成したこと」や「解決したこと」を答える学生が多いそうです。
面接官の問いにズレた回答をしたり、長々と説明するのもNGです。
「シンプルに15秒から30秒ぐらいで答えられるか。面接官に好印象を与えるポイントです」
より具体的に伝えて、自分らしさを出すのも良いでしょう。
大神田 「例えば、学生が『私はアルバイト先で、積極的なコミュニケーションをとりました』とガクチカを語ったとします。この一言だけだと、自分なりに何を考えて、どう工夫したのか分からず、その人らしさが見えてこないんです」
抽象的な内容ではなく、より具体的に端的に伝える――。
少し難しいかもしれませんが、友人と練習を重ねて伝える練習をしてみましょう。
面接官はガクチカの結果よりも、その「過程と再現性」をみていると明かします。
大神田 「面接官は、やっぱりサークルとかアルバイトとか、大学のゼミとかでやってきたことの再現性を見ています。
面接官にとって目の前にいる学生は、将来一緒に働く社員になるかもしれません。ガクチカでの過程を入社後の業務で、どう再現できるかを必ず見ています。
ガクチカの過程で自分はどう考えて、何を実行したのか、再現する力があるか」
「勉強ができる」「頭が良い」「スポーツが万能」といったことは見ていないとも強調します。
それよりも見ているのは、成果を出すために安定的にパフォーマンスを発揮できる「コンピテンシー」。
実社会では、正解を出すために考えて行動するのではなく、成果を出すためにどう工夫するのかが問われます。
大神田「大事なのはコンピテンシーです。成果を出すために、どういう工夫をした学生なのかを常に見て、考えて面接をしています。ガクチカを聞いている本質はそこにあります」
面接官がガクチカを通じてあなたの何を知りたいのか。面接官の立場に回ってみて、語る際に意識することが、内定に近づく一歩につながるでしょう。
(取材・文:比嘉太一、編集:野上英文)