ネットで十分? 対面の就活説明会 “令和版”ハック術5選

ネットで十分? 対面の就活説明会 “令和版”ハック術5選

    就職活動で採用のオンライン化が進むなか、対面型の企業説明会に参加すべきでしょうか? 

    時代遅れと、あなどるなかれ。就活トレンドや企業の社風・熱意をナマでつかめるほか、「偶然の出会い」が進路を変えるかも。「就活生お助け講座」に飛び入り参加すれば、乗り遅れたと感じている大学生も一気にキャッチアップできます。令和版の“就活説明会の大活用法”を5つ公開します。

    約520社が参加した「マイナビ就職EXPO」の会場
    約520社が参加した「マイナビ就職EXPO」=1日、東京都江東区(比嘉太一撮影)


    目次

    活用1: 就活のトレンドを知る

    「うちの会社の話を聞きませんか?」「まだ、席が空いているのでどうぞ」

    3月の「就活解禁」に合わせて東京ビックサイト(東京都江東区)で開かれた合同企業説明会「マイナビ就職EXPO」に足を踏み入れると、ブースを構えた企業の人事担当者が学生一人ひとりに積極的に声をかけていました。

    IT関連企業の人事担当の女性は言います。

    「知名度のある会社は何もしなくても席が埋まりますが、あまり知られていない会社は説明会に参加してもらうのに苦戦します」

    ブースの前で通りかかる学生に積極的に声かけしている人事担当
    ブースの前で通りかかる学生に積極的に声かけしている人事担当=1日、東京都江東区(比嘉太一撮影)

    参加企業は約520社。主催したマイナビの高橋誠人編集長によると、アフターコロナを見据えて採用は活発になっており、学生優位の「売り手市場」です。

    リーマンショック(2008年)後に新卒採用を控えて社内の年齢構成がいびつになった企業もあり、「新卒だけは採用を続けよう」という傾向があるといいます。

    なかでも採用意欲が活発なのは、コロナ禍の影響から回復しつつある航空業や鉄道業、ホテル・旅館業です。

    企業ブースの中には、話題の「ジョブ型」で募集している企業もありました。

    会場を歩くことで、いま求められている仕事や採用の大きなトレンドを追えます。

    イメージ画像 就活の男子学生
    SetsukoN/ iStock

    活用2: 言語化できない社風や熱意

    2020年以降はコロナ禍で、オンラインによる説明会や面接試験が主流になりました。今年は「対面」が復活して「オンライン」と両立させた「ハイブリッド型」であることが特徴です。

    今年の学生たちは「入学したときからオンラインの授業を受けてきたデジタルネイティブ世代」(高橋編集長)。学生側も企業側も両者をうまく使い分けているといいます。

    では、対面型のメリットは何でしょう?

    高橋編集長は「社員の熱意や雰囲気、社風など言語化できないことを感じられること」だと強調します。

    報道機関の取材に応じるマイナビの高橋誠人編集局長
    報道機関の取材に応じるマイナビの高橋誠人編集長=1日、東京都江東区(比嘉太一撮影)

    都内の大学2年生の塩澤真里さん(20)も、オンラインでは得られない「肌感覚」を求めてきました。

    「人気企業は倍率が高くて書類選考で結構、落とされると聞いたので、希望する企業の雰囲気を知りたい」

    こうしたニーズをすくい取ろうと、企業側も備えています。

    例えば日本生命保険は、現場で働く社員と少人数で話せる個別相談ブースを設けていました。

    人材開発部の宮澤遊馬調査役は「弊社のことを深く知ってもらうきっかけに加えて、働くことへのイメージもわくと思います」と狙いを語ります。

    会場ブースに日本生命保険が設けた個別相談ブース
    会場ブースに日本生命保険が設けた個別相談ブース=1日、東京都江頭区

    活用3: 説明会は「偶然の出会い」

    初日に来場した学生はおよそ4千人に上りました。

    来る前と帰る時で、志向やモチベーションが変わる学生も少なくありません。

    東京農業大学3年生の吉田晃大さん(21)も、その1人です。

    大学の専攻から農業に関わる企業や食品メーカーを希望していましたが、合同説明会で保険業界の人事担当者と会ったことがきっかけで、関心を持ちました。

    「たまたま聞いた説明会で社員の熱い思いや社風をリアルで感じて、一緒に働きたいと思いました。今まで考えたことがなかった保険業界も受けてみたい」

    合同企業説明会に参加する学生たち=1日、東京都江東区(比嘉太一撮影)
    合同企業説明会に参加する学生たち=1日、東京都江東区(比嘉太一撮影)

    企業説明会にいま参加する意義について、採用コンサルタントの井上真里さんは次のように解説します。

    「合説は学生、企業の双方にとって偶然の出会いの機会です。学生はパブリックな情報よりもリアルな話が聞けて視野が広がり、理解が深まる場。企業は一言でも対話することで学生の興味を喚起して、良い人材獲得につなげられる場」

    ネット時代に「セレンディピティ」という言葉が注目されています。

    例えば、ネットでも注文できるけど、たまたま入った書店でいい本に出合った.....。求めているものとは違ったけれども、幸運を得る「偶然の力」のことです。

    合同説明会も、いわば「就活の大型書店」のような存在として活用できそうです。

    男子学生のイメージ画像
    Koji_Ishii/ iStock

    活用4: お助け講座でアップデート

    この日から就活をスタートさせた学生もいました。

    日本大学3年の男子学生(21)は、職種も業界もまだ絞っていません。友人に誘われて、初めて説明会に参加しました。

    「意識の高い人は、すでに業界や企業を決めている。少し焦っています。これから自己分析やエントリーシートの書き方も学んでいく短期決戦で忙しくなります。納得できる仕事につけるために頑張りたいと思います」

    企業説明会でメモを取る学生=1日、東京都江東区(比嘉太一撮影)
    企業説明会でメモを取る学生=1日、東京都江東区(比嘉太一撮影)

    会場では、企業説明だけではなく、さまざまな「就活お助け講座」が開かれていました。エントリーシートの書き方や自己分析の方法、面接の臨み方などです。

    スイッチを入れるのが遅かった人も、就活モードへと網羅的に「アップデート」できる場です。目的を絞って、臨時セミナーを「狙い撃ち」するのも良いでしょう。

    エントリーシートの書き方講座に参加する学生たち=1日、東京都江東区(比嘉太一撮影
    エントリーシートの書き方講座に参加する学生たち=1日、東京都江東区(比嘉太一撮影)

    活用5: プレ就活生の下準備

    この日、報道陣も集まっていましたが、「昔ほど騒がれなくなった」「合説は『氷河期』」といったネット記事も出ています。インターンを経験した学生の中には就活をほぼ終えている人もいて、早期化や分散化を理由に挙げています。

    実際、就活を早期に始めた「プレ就活生」に出会いました。

    大学2年生の阿蘇香粋さん(20)は、就活が本格化する来年を待たず、今年の夏から募集が始まるインターシップを見据えています。

    「人気企業のインターンは6月から募集が始まります。人事担当者から企業説明を直接、聞いた方が効率よくインターン先を決められると思って来ました」

    イメージ写真|ガッツポーズする女子就活生
    maroke/ iStock

    対面型の企業説明会の活用術を紹介してきました。

    1. ジョブの流行・傾向をつかむ

    2. 社風や雰囲気を肌で感じる

    3. 偶然の出会いを楽しむ

    4. 講座活用でアップデート

    5. プレ就活生の下準備

    うまく組み合わせれば、「リアル説明会も捨てたものじゃない」と思えるかもしません。

    (取材・撮影:比嘉太一、編集:野上英文)