ゲームクリエイターの経験談この職業のプロになるには

同業の先輩や同僚にアドバイスされたことで、最も仕事上の教訓になったことは何ですか?

  • 押山 萌香
    現職者押山 萌香
    経験: 17年
    株式会社バンダイナムコスタジオ

    人に伝えるために手段を選ぶな

    一人でゲームを作ることもできますが、会社ではいろんな方と協力して面白いものを作るのが仕事です。

    その際に、どういうものを作りたいのか、作ってほしいのか、きちんと説明する必要があります。

    通常は企画書や仕様書、発注書等の書類を使いますが、それで作っていただきたいものが伝わらなければ意味はありません。

    「とにかくどんな手段でも良いから、なにを作りたいか説明しろ。人に伝えるために手段を選ぶな」

    いろんな先輩に、言葉を変えてずっと言われ続けまし...

    た。 長々と仕様書で詳しく書いたのに、いやそうじゃないんですよ確かに仕様書読むとそういう風にもとらえられますけど……というアウトプットになってしまった記憶もたくさんあります(そのときはものすごく頭を下げてリテイクをお願いしました)。 反省してその次は、こんな感じにしたいんですよ! と自分たちで演技をして写真を撮ったものを説明に使ったり、絵を描いたり、コンテを作ったり、自分で試作版を作ったり。様々な手段で意思の疎通を図りました。 つたなくてもたった一枚の写真、走り書きのイラスト、シンプルな作りの試作版の方が一瞬で意図が伝わって、それを受け取った方々が、何倍にも魅力的なイベントシーン、メニュー画面、キャラクター……ゲームに組み立てていってくださいます。 チームで一つの目的に向かっていく以上、意思の疎通は本当に大切で、リモートワークが多くなった今、ゲーム開発以外にも効く言葉だなと思います。 ※なお、最初にそれを言った先輩のゲームのプレゼンにはいまだに巻き込まれて、プレゼンのためにコスプレやら寸劇やらをさせられます。本当手段を選ばない。


  • 平山 尚
    現職者平山 尚
    経験: 8年
    株式会社カヤック

    「そういうんじゃねえんだよなあ」

    これはもう20年も前のことになる。

    前の会社に新卒で採用試験を受けた時のことだ。


    私は自分にゲームを考える能力があるとは全く思えなかったので、

    技術面で貢献する仕事ができればいいと考えていた。

    なので「プログラマとして技術力を高めて、共通化できる部分を共通化したり、

    開発ツールを整備したりして、良いものを効率良く作ることに

    貢献したい」みたいなことを言ったと思う。


    それに対して、面接官だった後の先輩が、

    「そういうんじゃねえんだよな...

    あ」と言った。 私が同じ立場ならそう言うかはわからないが、同じように思うだろう。 どういうことか。つまり、我々は遊びを作っているということだ。 工業製品ではないし、必需品ではない。 ソフトウェア工学の知見を活かして 製品の効率と品質を上げなければまともに発売できない、 という現実はともかくとして、 我々は遊びを作っているのである。 効率がどうとかは、ゲームが面白いとなってからの話であり、 面白くなければただのゴミなのだ。 結局、参加しているメンバーが面白いと思っていないゲームは つまらないのだし、 面白くないものをいくら効率良く不具合少なく作っても 売れないしお客さんにも愛されないのである。 「いやそれは企画職の仕事だろ」と思う時は正直あるが、 仮にそうであったとしても、ゲームが売れなければ自分も 不幸になるのであって、その境界線を守ることに大した意味はない。 その後何年か経って会社も別になった後、 その先輩と会う機会があった。 「おまえ、本当遊びをわかってねえな」 と言われた。 たぶん今会ってても同じことを言われると思う。 結局私はプログラマの領分をあまり出ず、 言われたものを上手に作ることに集中してしまいがちだ。 ある程度大きな規模の開発なら、 むしろそうすべきだったりもするのだが、 そういう現実があるからこそ、「そういうんじゃねえんだよなあ」 という言葉が思い出されることには大変な意味があった。 そして今、ほとんど一人で製品の改善作業をやる状況になって、 それが骨身に染みている。 技術的な側面はいろいろあるが、「そういうんじゃねえ」。 これは遊びなのだから。