国家公務員の経験談苦労

この仕事をやっていて、眠れないほどしんどい瞬間はどんな時ですか?

  • 芳賀 達也
    現職者芳賀 達也
    経験: 11年
    農林水産省

    新しい制度を作る際に、あらゆるケースを想定して、ミスや見落としがないかを精査しないといけないとき

    新しく制度を作ったり、既存の制度を大きく変更したりするときほど、仕事としては面白い一方で、同時に眠れないほど不安になります。国の制度は全国に適用されることがほとんどですし、新しく規制を作る場合は、事業者が拒否しても国の強制力をもって無理やり適用されます。また、法律などはそう頻繁に改正することもできません。それゆえ、何かしら制度に問題があると、それによって多数の人々が不利益を被ることになります。また、見落としがあって、制度に抜け道のような...

    ものができてしまった場合、そこから制度全体が崩れてしまうことも考えられます。その場合、直接に被害を被るのは自分ではなく国民だというのが行政の仕事の特徴だと感じています。 このため、新しく制度を作る場合、ミスや見落としがないかを徹底して洗い出してチェックします。「こういうケースが出てきたらどう処理するか」「こういう悪いことをする事業者が出てきたらどう対応できるか」といった点を、想像力を働かせて考え、およそ想定できる全てのケースに対応できるよう細部を詰めていくのですが、そのときには、「本当にこれで十分か。気付いていない抜け穴があったらどうしよう」という不安な気持ちで、帰りの電車でも、また夜寝るときも考え込んでしまうことが多々あります。 例えば、数年前、水産の養殖業の資源管理のルール作りに携わったときは、全ての養殖業者がルールをしっかりと遵守して、国全体として資源を適切に管理できるようにすることが何より重要でした。なので、「抜け道や悪用が一切できないルールになっているか」ということを、あらゆるケースを想定してチェックする必要がありました。自分としてはチームのメンバーとよく議論をしてしっかりとした制度にしたつもりでしたが、新しい制度が始まる前の夜には、「本当にあれで十分だっただろうか。抜け道を使われて、資源管理が守られなくなるおそれはないか。」と不安な気持ちで眠れませんでした。 国の制度を担うという責任の大きさと裏返しで、良い意味で非常に緊張感のある仕事だと思います。


  • 田口 周平
    現職者田口 周平
    経験: 8年
    経済産業省

    とはいえ眠れないほどしんどい時ほど、国家公務員の存在意義が問われている時だと思ってしまう

    今年(2020年)の4-6月ごろは、中小企業向けの資金繰り施策の立案や執行のために、物理的にほとんど寝れない日が続きました。何をやっていたかの一例をあげれば、

    ・無利子で融資をするためには予算が必要ですから、そのための予算要求

    ・融資の枠組み作り(上限額、貸付期間、据置期間等々)

    ・関係する機関(金融機関、自治体等々)との調整、ルール作り

    ・国会などの質疑対応

    などなどです。


    ただ、企業や個人が危機的な状況に瀕した状態でこそ、1人の国...

    家公務員としての存在意義が問われているとも思い、身体的にはきつかったものの、やりがいには満ちていました。 同様のことは、昨今相次ぐ災害対応でもいえるかと思います。 2018年の北海道胆振東部地震では大きな火力発電所が停止し、大規模な停電が発生しました。電力の供給量が大幅に縮小する中で、再度の停電を避けるために、企業だけでなく住民の方々にも節電要請をしました。さらには避難所にベッドやトイレなどの生活用品を届ける仕事もしていました。こうした業務に従事した際も、まさに眠れない日々が続いたわけですが、同時に自分の仕事が誰かのためになる、という充足感もありました。