国家公務員の経験談未経験者へのおすすめ本

転職や就活で、この職業を目指す未経験の方におすすめの書籍は何ですか?理由と合わせて教えてください。

  • 橋本 賢二
    現職者橋本 賢二
    経験: 17年
    人事院

    『『職業としての政治』』マックス・ウェーバー

    古典中の古典ですが、「行政」の意味を考えるためには必読書だと考えています。

    三権分立の三権とは、立法・行政・司法と言われますが、なぜ「行法」ではないのでしょうか?行政だけ「政」の字が用いられている意味を考える必要があります。国家でも地方でも、公務員(≒行政官)の仕事を考える時、政治との関係は切り離すことはできません。行政の基本は、政治的に決定された政策の実行や執行を担っているからです。


    この点について、行政には「法律による行政の原理」...

    といわれる考え方があり、特に法学部出身の人は、行政は法律に基づいて政策を執行する仕事だと理解していることが多いです。もちろん、行政は人の権利や義務に関係する仕事なので、法令の根拠に基づいた運用は絶対です。しかし、法律はあくまで政策の実行手段に過ぎません。行政の定義が「国家の権能から立法と司法を除いたもの(行政控除説)」という考え方が通説となるくらい、行政には一言では語り尽くせない種類の仕事があります。ウェーバーが示した正当性の根拠や政治の役割は、一言では語りつくせない多岐にわたる行政の仕事の意味を政治との関係で考えるための基盤になるものです。 政策の企画立案に関わりたいと思っている人には、ぜひ読んで、考えていただきたい本です。薄い本でありながら、ウェーバーの考えが凝縮されています。


  • 田口 周平
    現職者田口 周平
    経験: 8年
    経済産業省

    『職業としての政治』マックス・ウェーバー

    20世紀前半の社会学者のマックス・ウェーバーによる著作です。


    題名の通り、近代国家の背景や、職業政治家に求められる倫理や条件ん、政治家と官僚との関係性などが書かれています。


    個人的に一番印象に残っているのは、最後に記載されている以下の部分です。


    「自分が世間に対して捧げようとするものに比べて、現実の世の中が——自分の立場からみて——どんなに愚かであり卑俗であっても、断じて挫けない人間。どんな事態に直面しても「それにもかかわらず!」...

    と言い切る自信のある人間。そういう人間だけが政治への『天職』をもつ。」 政治への『天職』の有無に関する記述ですが、この、「それにもかかわらず!」といえる強い信念があるかどうかは、いまの時代の官僚にも求められる気質だと、個人的には思っています。 職業としての政治は薄い本ですが、学生の間は極力、付け焼刃のビジネス本を読むより、歴史の評価に耐えた、人文・社会科学の古典を読んだほうが良いと個人的には思っています。 ビジネスの知識をつけるより、自分がどう生きるか、社会の構造はどうなっているのか、といった根源的な問を、偉人たちとの対話を通じて探ったほうがいいと思います。 参考までに、人事院がかつて若手行政官向けにまとめた参考図書です。とてもバランスよくまとまっていて参考になります。 人事院 若手行政官への推薦図書 (平成23年4月) https://www.jinji.go.jp/kensyuu/110801suisentosyo.pdf