国家公務員の経験談この職業のプロになるには

同業の先輩や同僚にアドバイスされたことで、最も仕事上の教訓になったことは何ですか?

  • 橋本 賢二
    現職者橋本 賢二
    経験: 17年
    人事院

    担当業務は、日本で一番詳しい担当であれ

    国家公務員であれば、おそらく誰でも言われたことのあるアドバイスだと思いますが、この意味を自覚すると、とても重いアドバイスです。国家公務員の人事ローテーションは1~3年で、人事異動の度に担当業務が変わりますが、着任したその日から担当者としての判断が必要になります。もちろん、前任者からの引継ぎや周りのサポートも得られますが、進行中の政策なども担当者として推進していく必要があるので、人一倍の勉強が必要になります。


    異動先によっては、かなりの...

    量の勉強を必要とする場合もありますが、日頃からアンテナを高く広く張り巡らせていれば、行政官としての経験知と組み合わせて、重点的に勉強するべきポイントを見出して一定のレベルに到達できます。さらに、担当業務を進めるなかでも、関係者との検討や意見交換の機会があるので、その都度、インプットとアウトプットを高速で回転させていきます。政策を担っている自覚があるからこそ、勉強や業務にも身が入り、担当業務に詳しくなっていくのだと感じています。 頻繁な人事異動で、短期の人事異動で専門性が育てられないとの声も聴かれますが、複数領域に触れることで物事を横断的・統合的に見られるメリットがあります。また、国家公務員の場合は省庁別採用なので、大まかな活躍分野は定めやすいというメリットもあります。その道を深く極める専門家になることは難しいかもしれませんが(中にはそのようなキャリアパスを目指す方もいます)、様々な分野を経験するからこそ掛け算で得られるレアなキャリアパスを築くことも可能になります。 キャリア形成に必要だと考えるのであれば、組織にとっての必要性と妥当性を添えて異動希望で訴えていくこともできますし、本業に影響にない範囲であればプライベートで行動することもできます(もちろん公私の使い分けは必要です)。自分の意志と行動次第でどのような可能性も考えられます。


  • 芳賀 達也
    現職者芳賀 達也
    経験: 11年
    農林水産省

    課長補佐になったら…、課長になったら…、と言っている人は一生何も実現できない

    入省1年目のときに先輩から言われた言葉です。


    農林水産省に限らず省庁は大組織なので、「若いうちはなかなか自分がやろうと思ったことはできない。でも課長補佐や課長になったらこういうことをやりたい。」などと考える人も少なからずいます。ですが、その先輩曰く、そうした考えの人は結局どの役職に就いても「まだ権限がない」と言って先送りにしてしまう。若手の係員や係長でも実はできることはたくさんある。だから、「偉くなったら」などと言わずに、その時々の立...

    場で可能な限り自分の実現したいことに取り組んでいくべきだ、とのことでした。 この教訓は、8年間農林水産省で働いてきて本当にその通りだな、と感じます。農林水産省のような大きな組織であっても、実は若手が自分の意見を政策に反映できることは意外に多いです。大きな政策であっても、上司にちゃんと根拠を持って説明すれば聞いてもらえる組織風土がありますし、細かい部分は若手にかなり裁量が与えられています。 例えば、前述の水産の養殖業の資源管理のルール作りを担当したときは入省3年目の係員のときでしたし、食品流通制度の大きな見直しに携わらせてもらったのは入省5年目の係長なりたてのときでした。もちろん、同僚や上司と一緒に進めたのですが、それでも若手の自分の意見がこんなに通るのか、と驚いたものです。これらに限らず、日々の業務の中で、実は自分のやりたいことを少しずつですが実現できる機会はいくらでもある、というのが実感です。 そういう意味では、若手のうちからどんどんやってやる、という人にこそ是非農林水産省に来ていただければ、力を発揮していただけるのではないかと思います。